給与計算ラボ

給与計算の方法、流れ

退社する従業員の書類やデータ、なにを、いつまで残しておけばいいの?

ひとりの従業員が在籍することに関して会社が抱える資料やデータは膨大です。そのような資料やデータは従業員が退社したらすぐに廃棄してよいものでしょうか。

実は何かのときに遡って調査ができるよう、資料・データの種類によって各法律で保存期間が決められています。
それぞれどのような保存期間があるのか、給与に関するもの、そして労働基準法に関するもの、その他にわけて説明します。

1、給与に関する資料は税に関する資料です。

給与に関する資料で保存が決められているのは、税に関する資料です。具体的には、給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期限が、所得税法施行規則76条の3に定められているのです。その保存期間は7年間とされており、保存すべき書類は以下の通りです。

  1. 給与所得者の扶養控除等申告書
  2. 従たる給与についての扶養控除等申告書
  3. 給与所得者の配偶者特別控除申告書
  4. 給与所得者の保険料控除申告書
  5. 退職所得の受給に関する申告書
  6. 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
  7. 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

ところで、これらを保存する義務のある者は誰でしょうか。

それは源泉徴収義務者が保存義務者です。

会社は従業員の源泉徴収義務者ですから上記の書類を7年間保存する義務があります。ところで、いつから7年間保存すればよいのでしょうか。従業員が退社した日からでしょうか。7年間の起算日が決められています。

その起算日は申告書の提出期限の属する年の翌年1月10日から7年間、となっています。その7年日が何年の何月何日にあたるのか、廃棄資料の保存期間の管理が必要です。

ちなみに、源泉徴収票の保存期限も同じく7年と考えてよいでしょう。これは保存期間として法律に明記されているわけではありません。

しかし、国税通則法第70条に「偽りその他不正の行為がある場合は7年遡及できる」と規定されていること、また同じくと第74条の2に、「源泉徴収票を提出する義務のある者」が税務調査の対象者として規定されていることから、源泉徴収義務者は税務調査で7年間遡った質問に答えられるようその間は保存すべき、と読むことができるためです。

さて、ここまで紹介した所得税法も国税通則法も、マイナンバーの制度を規定する法律ではありません。ですからこれらにマイナンバーの保存期間の規定はもちろんありません。また、マイナンバーという高度の個人情報の特質から不要になれば即時にマイナンバーの保存は止めるべきです。

しかし、上記の書類にはマイナンバーの記載がなされるようになっています。ですから上記の書類の保存期間中は書類からナンバーを削除までする必要はなく、資料の保存期間中はそれに記載されているマイナンバーも間接的に保存できると考えてよいでしょう。

ここで注意すべきは、資料やデータの保存期間は保存が義務であるのに対し、マイナンバーは個人情報保護のために保存をなるべくしないという観点で考える点です。

2、労働基準法による保存期間の規定もあります。

以上は税に関する資料の話でした。従業員に関する資料やデータは労働基準法にも規定があります。具体的には労働基準法の第109条です。「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。」と規定しています。

これら資料の保存期間の3年についても、その起算日に注意が必要です。具体的には労働基準法施行規則第56条に、先ほど紹介した労働基準法第109条の記録の保存期間が以下のとおり具体的に定められています。

  1. 労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は解雇の日 
  2. 賃金台帳については、最後の記入をした日 
  3. 雇入れ又は退職に関する書類については、労働者の退職又は死亡の日 
  4. 災害補償に関する書類については、災害補償を終つた日 
  5. 賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その完結の日

3、他の法律も保存期間を規定しています。

それぞれの法律はその立法趣旨に沿って、資料の保存期間を求めています。具体的には次の通りです。

  1. 安全衛生法によって健康診断の結果は5年間保存
  2. 雇用保険法によって雇用保険に関する書類は4年間保存
  3. 労災保険法によって労災保険に関する書類は3年間保存
  4. 健康保険法によって健康保険に関する書類は2年間保存
  5. 厚生年金法によって厚生年金に関する書類は2年間保存
  6. 雇用保険法によって雇用保険に関する書類は2年間保存

ところで、税法や労働基準法関連で保存が義務付けられている資料は、調査・質問の対象になるため詳細管理が必要です。つまり税務署職員に質問された際にさっと取り出して説明できるような管理です。

ところが、その他のこれらの資料はそのような調査対象となるような機会はあまり考えられません。ということは、「○年○月○日に廃棄可」と記載した箱に入れて、その期日が来たらばっさり廃棄するという方法でも良いでしょう。

4、保存方法も廃棄方法も慎重にしましょう。

税に関する資料も、労働基準法に定められる資料、そしてその他の資料も、従業員個人の大切な個人情報です。期間が経過すれば廃棄する資料であっても、廃棄するまではきちんと情報の漏れないように保存する必要があります。誰もが見られる場所に保存したりするのはもってのほかです。

退社した社員本人でなくても、そうした保存方法は在籍する社員が見ています。社員は「自分が退社したら、同じように情報は他の社員に見られてしまうのだな」と認識しますから、会社への信頼を失いかねません。会社は情報に関してどのような場面でも真摯な管理が必要です。

また、廃棄方法も大切です。ゴミ袋にいれてゴミ置き場に出すなんて杜撰すぎますね。きちんとシュレッダーにかけて情報の漏れを厳しく防ぎましょう。

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