給与計算ラボ

業種別の給与計算の注意点

フランチャイズ店の給与業務の注意点 - 店長や管理職の待遇や契約

フランチャイズ店の給与計算の特徴としては、パートやアルバイトが多い、深夜営業が多い、店長などの店舗管理者に長時間労働が多い、バイク・自転車通勤が多く交通事故が起こりやすい、ということが挙げられます。

パート、アルバイトの雇用時の労働契約の締結、更新

まず、第一の、パートやアルバイトが多いということについてですが、普通、フランチャイズ店は、サービスマークやトレードマーク、経営ノウハウを提供する本部は別として、フランチャイズに加盟する側の方は、店舗のオーナーであることの多い店長など以外は、正社員を採用せず、ほとんどがアルバイトやパートを採用して業務を運営します。

ですから、パートやアルバイトの占める割合が非常に高くなります。パートやアルバイトの方を雇用する場合には、短期の有期雇用契約に基づくことが多くなり、比較的長期間にわたり勤務が継続する場合にも、有期契約の更新を繰り返すことが多くなりますので、契約更新に関してトラブルが起こりやすくなります。

従って、契約締結や更新際には、本人の意思をよく確認すると同時に契約の更新に関する事項などを十分に説明するなどの配慮をする必要があります。また、労働契約に関しましては、口約束ではなく、書面の形で締結することが後々のトラブル防止に役立ちます。

時間外や深夜帯での勤務の注意

第二に深夜業が多いということについてですが、代表格であるコンビニをはじめとして、24時間営業を行うことがフランチャイズ店では多いですが、それに伴い、深夜労働が当然に発生します。深夜労働は通常の時間の賃金の125%の割増賃金の支払が必要です。

また、それが時間外労働と重なるときは、150%の割増賃金の支払が必要です。労働時間の管理を正確に行い、時間外労働や深夜労働が発生した場合には、きちんと手当を支払う必要があります。

また、深夜労働は、労働者に相当な負担がかかります。パートやアルバイトの方は、正社員と異なり、月100時間を超えるような残業をした上に、重ねて月数十時間の深夜労働を行っているようなことはないとは思われますが、それでも深夜労働は大変なことですので、それを行っている労働者の健康には配慮していなければなりません。

さらに、深夜営業を行っている店舗に対する強盗事件が多発しております。深夜営業を行っているのですから、こういう危険が増すのは仕方ありませんが、日頃から防犯訓練などを実施して、万が一、そういった事件に巻き込まれた場合でも、落ち着いて対応できるようにしておくことが肝要です。

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店長など、管理者の待遇の注意点

第三に、フランチャイズ店は、パートやアルバイトを多用する分、店長等の店舗管理者の仕事が多くなります。ここで問題となるのは、「名ばかり管理職」の問題です。労働基準法上、管理監督者には労働時間に関する規制が適用されません。

このことを悪用して、実際には、自分の労働時間を自分で管理できる、また、パートやアルバイトに関する採用、解雇、昇給などの権限を有する、などという管理監督者の要件を満たしていないにもかかわらず、名称ばかりを管理監督者のそれにして、僅かばかりの役職手当と引き換えに、月100時間を超えるような時間外労働を残業代なしに労働者に強要するというものです。

もともと、残業代の支払には長時間労働を抑制する働きがありますが、これを適用除外にすると、時間外労働に関する制限がなくなり、安易な長時間労働を誘発し、労働者を非常に危険な状態に置くことになります。

このような法の盲点を突いた巧妙で悪質な手口は、この業界で特に目立ちます。利潤追求のために労務費を節約したいのは当然ですが、それは法律の規定を遵守した上で認められるものであり、このような違法な手段を利用した場合には、あの会社はひどい会社だとかという風評が立ったり、あとから裁判沙汰になり多額の賠償金の支払いを求められたりと、最終的にはそのツケを払わされることが多いです。

とにかく、店長等に業務が集中して、時間外労働が極端に長時間になる場合で、店長等に労働者性が認められる場合には、法律上の時間外勤務の上限時間を遵守する、きちんと残業代を支払う、健康障害を防止するための法令の規定の要件に該当する場合にはきちんと医師の診断を受けさせる、どうしても時間外勤務の上限時間を守れない又は残業代を払いきれない場合には人員を増やす、などの対策をとる必要があります。

とにかく、「名ばかり管理職」問題がこの業界で多発することの背景には、利益追求のためには、労働者が病気になっても怪我をしても構わないという考えが潜んでいるようにも思えるのですが、そのような考えの先に明るい未来などはありませんから、日頃からしっかりとした労務管理を行う必要があります。

通勤時の事故などの対応

最後に、バイク・自転車通勤が多く、交通事故が多いことが挙げられます。とくに24時間営業の場合、交代制の勤務により帰宅が深夜や夜勤明けの早朝になる事が多く、深夜の視界不良による事故、早朝の疲労による交通事故が起きやすくなります。

とりわけバイク・自転車は被害者になった場合、重大事故となりやすいですから、気を付けなければなりません。日頃より交通安全に関する指導を行い、また適切な勤務シフトを組んで、特定の従業員に過度の疲労がたまらないように配慮しなければなりません。

また、万が一、事故が起きた場合には、通勤途上の事故は労災保険の対象となりますから、労災隠しなどをせず、正確に報告して、労働者に労災保険による補償を受けさせるできです。

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