中小企業の社長なら知っておきたい標準報酬額の算定の仕方
そもそも標準報酬月額の「標準」とは?
健康保険料や厚生年金保険料といった各種社会保険料を計算するためには、標準報酬額の算定が不可欠です。保険料は「標準報酬月額×保険料率」という公式によって決まるため、経営者としては標準報酬月額についての理解も深めておく必要があるでしょう。
では、標準報酬月額とは一体何なのでしょうか。
「報酬月額」ならば、一見してイメージを掴みやすいのではないかと思われます。これは文字どおり、1か月あたりの報酬額のことです。基本給に加え、役職手当や通勤手当、時間外勤務手当などの諸手当も含まれます。ボーナス以外のほとんどが含まれると考えてよいでしょう。
ところが、この前に「標準」の二文字がつくだけで途端に得体の知れない専門用語のように思えてきます。
実は標準報酬月額とは、報酬月額を30等級に区分けし、その等級ごとに標準額があるという意味なのです。
標準報酬月額の30の等級
標準報酬月額は、以下のように30等級に分類されてます。
- ・1等級(報酬月額 1〜101,000) … 標準報酬月額 98,000
- ・2等級(101,000〜107,000) … 104,000
- ・3等級(107,000〜114,000) … 110,000
- ・4等級(114,000〜122,000) … 118,000
- ・5等級(122,000〜130,000) … 126,000
- ・6等級(130,000〜138,000) … 134,000
- ・7等級(138,000〜146,000) … 142,000
- ・8等級(146,000〜155,000) … 150,000
- ・9等級(155,000〜165,000) … 160,000
- ・10等級(165,000〜175,000) … 170,000
- ・11等級(175,000〜185,000) … 180,000
- ・12等級(185,000〜195,000) … 190,000
- ・13等級(195,000〜210,000) … 200,000
- ・14等級(210,000〜230,000) … 220,000
- ・15等級(230,000〜250,000) … 240,000
- ・16等級(250,000〜270,000) … 260,000
- ・17等級(270,000〜290,000) … 280,000
- ・18等級(290,000〜310,000) … 300,000
- ・19等級(310,000〜330,000) … 320,000
- ・20等級(330,000〜350,000) … 340,000
- ・21等級(350,000〜370,000) … 360,000
- ・22等級(370,000〜395,000) … 380,000
- ・23等級(395,000〜425,000) … 410,000
- ・24等級(425,000〜455,000) … 440,000
- ・25等級(455,000〜485,000) … 470,000
- ・26等級(485,000〜515,000) … 500,000
- ・27等級(515,000〜545,000) … 530,000
- ・28等級(545,000〜575,000) … 560,000
- ・29等級(575,000〜605,000) … 590,000
- ・30等級(605,000〜635,000) … 620,000
(2013年12月31日現在)
報酬月額が5万円でも10万円でも、ともに1等級ですので、標準報酬月額は9万8000円となりますが、10万5000円であれば2等級となるので、標準報酬月額は10万4000円になります。
標準報酬月額はこうして算定する
原則的には、「毎年4月から6月までの報酬の平均額」によって標準報酬額は決定されます。
ここで決定した標準報酬月額は、以後1年間適用され、原則的に変更はできません。
なぜ3か月分の平均をとるかといえば、給与の中には、時間外勤務手当やインセンティブのような、一定額ではなく月ごとに変動する要素があるためです。サンプルとして3か月をとり平均値を出すことで、より実態に即した報酬月額を求めようというわけです。
ただし、ここでいう報酬には賞与や臨時手当が含まれない点には注意したいところです。あくまでも、標準報酬月額の目的は、労働の対価として安定して得られる報酬の平均額を求めることだからです。
平成23年度からできた標準報酬月額の例外規定
その目的をより追求すべく、平成23年度からは次のような例外措置も制定されました。
- (a) 当年4月から6月までの報酬額
- (b) 前年7月から当年6月までの報酬額
この両者の差額が2等級以上開いている場合、(b)から標準報酬額を算定することができるというものです。
この例外にはどういう意味があるかというと、世の中には季節によって報酬額が極端に変わる業種もあるためです。
従来の規定では、4月から6月が繁忙期で7月から3月にはその半分程度しか報酬がない場合、実際の経済状況にそぐわない多額の保険料を払わなければなりませんでした。この不公平感を是正するための例外措置なのです。
平均標準報酬月額について
標準報酬月額とセットで覚えておくとよいのが、平均標準報酬月額です。
こちらは、「被保険者であった期間の標準報酬月額の合計」を「被保険者であった期間の月数」で割ることによって求められます。この金額が年金額の計算に用いられます。
しかし、被保険者であった期間が数十年間におよぶと、初期と末期とでは金額の価値がまったく異なってしまっている場合も多く見られます。
これを是正するため、実際の運用の際には特定の再評価率を掛け、現在の価値に換算します。