社員が退社したときに必要な手続きとは? - 基本編
社員が退社したときに必要な手続きは、社員の退社理由によって異なります。社員が多くなってきたら、退社理由ごとに退社事務手続きをマニュアル化しておくとよいでしょう。おすすめは、事務手続きのチェックリストを作っておくことです。リストをチェックしながら手続きをすすめることで、円滑に退社手続きができるほか、手続きの失念などで退社した社員にまた会社に来てもらったり、追って郵送する、というような事務の不手際を予防することができるからです。
1、解雇ですか、または退職ですか?
会社をやめる、というのは法律的にいうと雇用契約の終了です。雇用契約の終了理由には、雇用契約期間の満了、雇用契約にある定年の到来、契約書や就業規則に謳われている事由による普通解雇や懲戒事由の発生による懲戒解雇、会社の経営上の理由によるリストラ(整理解雇)、会社の次ぐによる早期退職優遇制度、死亡退職、また従業員側からの一身上の都合などによる一方的契約解除があります。
この退職理由が大きく影響するのが雇用保険の失業給付です。社員の立場からみると「解雇」のほうがすぐに失業給付が受けられて有利なのです。しかし、次の就職の際には前職を解雇された、というのは入社査定の際マイナスに働くでしょう。会社としては、社員が失業給付を受けやすいように退職を解雇として手続きを協力してはいけません。
2、退職時のチェックリストをつくりましょう
(1)まず従業員から受け取るべきもののリストです。
退職届、健康保険証、社員としての身分証明書や社章、社員証、社内規定、名刺ののこりなどを回収し、退職後に社員としての対外的行動をできないようにします。厳しいようですが、これをせずに社員が御社の名を騙ってした行為の責任を御社がかぶることのないように、ぜひともきちんと回収してください。その他、会社の建物や敷地に入ることのできる鍵、制服や業務用の携帯電話、その他の備品を受け取ります。また、会社から社員への融資をしていた場合にはその清算をします。最終給与や退職金からの徴収や、現金や振込みでの徴収などです。清算は書類化して証拠を保存しておきましょう。
(2)保険関係の手続きに必要なものには、雇用保険被保険者資格喪失届、雇用保険被保険者離職証明書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届があります。
手続きが遅れて退職者の迷惑にならないよう早急にすすめます。また、このような社会保険ではなく、会社で社員の分をとりまとめて民間の保険会社に保険加入しているような場合には、個人加入への切り替え手続きなどが必要になります。
(3)税金に関するものでは、給与所得の源泉徴収票、退職所得の受給に関する申告書、退職所得の源泉徴収票、住民税特別徴収に関する給与所得異動届、そして退職証明書があります。住民税の徴収方法は退職者に確認してください。
(4)従業員に渡すべきものも忘れてはいけません。年金手帳や源泉徴収票、雇用保険被保険者証、離職票です。そのほか、退職後に従業員自身がすべき手続き、場合によってはした方が良い手続きなどをマニュアル化したものを渡してあげればより親切でしょう。従業員は退社後に失業給付をうけるか、他社に入社して御社からうけた退職手続きを他社での入社手続きに引き継ぐ必要があるからです。また、財形貯蓄などをしていた場合には貯金を従業員に返還し、会社がとりまとめて加入していた民間保険の返戻金などがあればそれを返還します。これらは各金融機関によって手続き期間が違いますので、返還が退社後になる場合には、いつ頃までに振り込まれるのか、などをきちんと説明し退職者の不安を取り除いておくべきでしょう。
3、引き継ぎはスムーズにしましょう
突然の解雇でない限り、退職者の退社日はあらかじめわかっています。退職する従業員の業務は誰が引き継ぐのか、スムーズに引き継げるよう退社が決まり次第準備をはじめましょう。
もし人手が不足するならば即座に求人募集をはじめます。ハローワークや各種人材紹介業者の利用が便利です。もし店舗をもつような事業主でしたら、店舗に貼り紙をするという方法もあります。また、アットホームな雰囲気の事業所なら働きたい人や通勤に便利なように近所の人に声をかけてもらう、など社員や町内の人にお願いする、という手もあります。
退職者が出ても、既存の従業員が工夫して分担すれば済む場合には、経費節減の観点から工夫して乗り切ることもお勧めです。この場合ただ負担が増えるだけ、という分担の仕方では社員の不信を招き、やる気を削ぎます。
そうではなくて、仕事のできる少人数の人材できりまわし、人を増やすよりも一人一人の給与を増やす、という方針で社員のやる気を引き出せれば社員にも雇い主にも良い結果につながります。
いずれにせよ、退職者の業務の全範囲について、「どれを、誰に、いつまでに」円滑に業務ができるよう漏れなく引き継ぐ、ということを明確にして引き継ぎをしてもらい、その過程で無駄な作業が見つかれば見直して効率化を図るとよいでしょう。