給与から源泉徴収される税額の計算方法について
給与から天引きされる社会保険料や税額でもっともその計算に注意を要しなければならないのが源泉税額になります。なぜなら、源泉税額はその徴収方法を間違い、国に納付する税額が過少となった場合は不納付加算税や延滞税など少なくないペナルティが発生するからです。そこで今回は給与所得に係る源泉徴収事務についてその制度の概要から具体的な注意点まで項目ごとにご紹介いたします。
源泉徴収の概要について
所得税の計算は納税者自身が計算して申告する申告納税制度がとられています。しかし、給与所得者についてはその便宜上、給与支払いの際に税額の前払いのような形で源泉徴収として所得税が強制的に徴収される制度を我が国ではとっています。実は、給与所得に係る源泉徴収制度は昭和初期から採用されており、とても長い歴史があります。源泉徴収された税額は通常、申告を経ずに年末調整という形で清算されることになります。ある意味で、申告納税制度を補完する形で源泉徴収制度があると考えられます。
源泉徴収の時期はいつ?
給与所得に係る源泉徴収義務者である使用者は、従業員から徴収した源泉税額を通常徴収月の翌月10日までに国に納付しなければなりません。ここで疑問なのがなんらかの事情で支払うべき給与を従業員に支払わなかった場合です。たとえば、4月分の給与を通常であれば4月25日に支払い、そのときに源泉税を徴収するわけですが、支払を5月にした場合はどうなるのでしょうか?源泉徴収の時期は給与を支払った時とされていますので、例の場合は5月に源泉税の徴収をし、6月10日までに国に当該税額を納付することになります。実際にはありえませんが、極端にいえば給与が未払いの状態であれば源泉徴収をしなくてもいいということです。
実際に給与から控除する源泉税額の求め方
給与から控除される源泉税額はどのように計算されるのでしょうか?複雑な計算が必要なのでしょうか。実は源泉徴収税額表というものがあり、基本的にはこの表にあてはまめることにより毎月徴収する税額を求めることができます。この税額表には甲欄、乙欄があり同じ給与支給額でもこの区分の違いによりその徴収税額がかわってきます。通常は1ヶ所からのみ給与の支給を受け、扶養控除申告書を提出している従業員については甲欄になります。しかし、掛け持ちで働いている方など2ヶ所以上から給与を有しているかたなどは乙欄で税額を計算することになります。
この源泉徴収税額表で源泉税額を求める際に特に気をつけなければいけないことが、給与の範囲と扶養親族の数です。
源泉徴収の対象となる給与の範囲は?
まず、源泉徴収の対象となる給与の範囲ですが、従業員の方に支給する給与の中には住宅手当や通勤手当、役職手当といった各種手当が含まれています。これらすべてが源泉徴収の対象となる給与になるのでしょうか?源泉徴収の対象となる給与の範囲は俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有するものと定義されています。しかし一般の方にはどれが給料の範囲に入ってくるかはわかりにくいと思います。そこで、特殊な給与として通期手当や出張旅費、結婚祝い金等についてはどの部分までが給料にあたるかが通達などに規程されています。特殊な給料を支給される際には手引きや、これら通達を参考にされることが肝要です。
扶養親族の数の求め方
次に扶養親族の数についてです。扶養親族の数にはすべての扶養親族が含まれると勘違いされる方も多いと思います。しかし、実は扶養親族の数に含まれる対象は以下のようになります。特にお子さんに関しては国の政策変更により平成23年分から改正になっていますので改めて確認しておく必要があります。
①配偶者
ただし、所得金額が38万円(給与所得者の場合は給与収入が103万円)を超える配偶者は該当しません。
②扶養親族
ただし、年齢が16歳未満(平成22年以前は扶養親族に含めることができました。)の親族及び年齢が16歳以上で所得金額が38万円(給与所得者の場合は給与収入が103万円)を超える親族は該当しないことになります。
なお、日本国外に住所を有する扶養親族がいる場合には、平成28年1月1日以降に支払われる給与等については扶養控除申告書に一定の書類の添付が義務付けられることとなりました。不当に扶養親族の数を増やしているだろうという方が多数に上るとの推測からこの制度ができたものと考えられます。ですので、調査などではこの点を重点的にみられる可能性もありますので、労務管理者の方は注意が必要になります。
まとめ
給与計算は複雑で手間もかかり、ある意味で従業員の方の生活にも関わってきますので間違いが許されないものになります。源泉徴収税額を求める際には、上述したような注意点に特に気をめぐらしながら計算をするとミスもなくなり適切な計算ができるものと思われます。