アルバイトの給与計算方法は?必要な確認事項と注意点
アルバイトを雇用する際給与計算が必要になりますが、「単に時給と勤務時間をかけるだけ」と考えていると苦労します。
実際は分単位での勤怠管理や残業、休日出勤に対する割増賃金の扱いなど確認事項が多く、
支払金額に誤りがないよう注意が必要です。
本記事ではアルバイトの給与計算に必要な確認事項と注意点を解説します。
アルバイトの給与計算に必要なもの
アルバイトの給料を計算するためには下記のものを準備する必要があります。
あらかじめ手元に揃えた上で計算を行うとスムーズです。
1、就業規則
10人以上の従業員を雇用する会社は、労働条件をまとめた就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出を行うことが義務づけられています。
この就業規則には、賃金についての規定も必ず記載しなければなりません。
アルバイトの給与計算をする際は、特に下記の点を確認しておきましょう。
- 労働時間や休日に関する規定
- 賃金の取り扱いに関する規定
- 賞罰や減給に関する規定
2、賃金規定
賃金に関するルールが膨大な量になった場合、就業規則から切り離して別途規定を作成する会社も多くあります。
計算方法の定義や支払方法、締切日、支払時期、昇給、休業手当など、会社独自の給与規定がある場合は必ず確認しておきましょう。
3、従業員情報
給与計算には、従業員の個人情報も必要です。役職や勤務年数が個人の給与に影響する場合は計算が複雑化します。
また、源泉所得税の徴収で家族状況を把握しておく必要があり、扶養家族に関する書類の確認も怠らずに行わなくてはなりません。
4、タイムカード
タイムカードやシフト表・勤務実績表など勤務日数や時間を記載した情報が必要です。
アルバイトの給与計算は原則1分単位です。10分単位や15分単位で計算する場合に端数を切り捨てることはできません。
アルバイトの給与計算における注意点
アルバイトの給与計算において重要な注意点は時間外労働に対する割増賃金です。
残業させた場合や休日に出勤させた場合、深夜に及んで労働させた場合には、その分だけ多く給与を払わなくてはなりません。
労働基準法に定められているため、アルバイトに対しても以下の割増賃金を支払う必要があります。
1、時間外労働の割増賃金
労働基準法には1日の労働時間を8時間、1週間の労働時間を40時間と定められおり、これらを超えて労働させた場合は割増賃金の対象となります。
時間外労働に対する割増賃金は「通常の賃金×1.25」で計算します。
2、休日労働(法定休日)の割増賃金
労働基準法には、使用者は労働者に対して1週間に1日以上、4週間に4日以上の休日を与えることが定められています。この休日に労働させると休日労働になり、割増賃金を支払わなくてはなりません。
休日労働に対する割増賃金は「通常の賃金×1.35」で計算します。
3、深夜労働の割増賃金
22時から5時までは深夜とされ、この時間帯の労働に対して支払う賃金には割増が必要です。
深夜労働に対する割増賃金は「通常の賃金×1.25」で計算します。
深夜に時間外労働をさせた場合の給料は、時間外労働の割増賃金と深夜労働の割増賃金、どちらもの割増賃金を適用して計算する必要があり、「通常の賃金×1.5」で計算した給料を支払わなければなりません。
また、休日に深夜にまで労働をさせた場合の給料も、休日労働の割増賃金と深夜労働の割増賃金、どちらもの割増賃金を適用して計算する必要があり、「通常の賃金×1.6」で計算した給料を支払わなければなりません。
アルバイトの給与計算方法
上述の点を踏まえて、実際に計算を行いましょう。
1、勤務時間の集計
給与計算期間内の労働時間を、次の3つの労働時間ごとに集計します。
勤務時間は1分単位で集計する必要があるため注意しましょう。
- 通常労働
- 時間外労働
- 休日労働
- 深夜労働
2、支給額の計算
従業員情報とあわせて時給や勤務時間を集計したら、実際に支給する額を計算しましょう。
通常賃金+割増賃金
※通常賃金=時給×勤務時間
※割増賃金=時給×割増率×時間外勤務時間
3、控除額の計算
アルバイトであっても、勤務状況によっては雇用保険や社会保険などへの加入義務があります。その場合には雇用保険料や社会保険料の控除が必要です。
①雇用保険料
- 失業した労働者に対する給付などを行う雇用保険の保険料
- 一般の事業は賃金×0.6%
- 農林水産・清酒製造および建設の事業は賃金×0.7%(そのほか、業種によって0.95~1.15%の会社負担があります)
②健康保険料
- 病気やケガで医療機関にかかる際の費用負担軽減などを行う健康保険の保険料
- 標準報酬月額×保険料率×1/2(残りの1/2は会社が負担)
③厚生年金保険料
- 老齢になった際の給付などを行う厚生年金の保険料
- 標準報酬月額×保険料率×1/2(残りの1/2は会社が負担)
④介護保険料
- 介護保険サービスが軽減された負担で利用できる介護保険の保険料
- 標準報酬月額×保険料率×1/2(残りの1/2は会社が負担)※40歳以上65歳未満の場合のみ負担
⑤所得税
- 給与所得に対して課せられる所得税
- 源泉所得税額表によって定められている金額
⑥住民税
- 給与所得に対して課せられる住民税
- 会社に届く納付書に記載されている金額
まとめ
給与計算はアルバイトも正社員と同様に確認事項や注意点が多くあり、間違えがないよう行わなければなりません。
時間外労働、休日労働、深夜労働などの割増賃金の支払いや控除額の計算など、複雑となる場合は給与計算ソフトなどのツールを利用することがおすすめです。
まずは計算に必要な書類準備や規定の確認をしっかり行い、正確かつスムーズな給与計算を目指しましょう。