外国人労働者を雇用している企業は要チェック! 税制改正のポイントまとめ
税制改正はほぼ毎年行われるといっても過言ではありません。
会社の経理や総務担当の方はその年々改正される内容を的確に把握しておかなければなりません。もし改正内容を理解せず例年通りの処理でいいやと安易に考え処理してしまった場合には、源泉税の計算を間違えてしまい大きいペナルティを課せられることにもなりかねません。
そこで、今回は平成27年度税制改正において大きく変わった国外居住親族に係る扶養控除等についてわかりやすくお伝えしていきます。
何がかわったの?
給与の源泉徴収税額を計算する際に重要な要素になってくるのが扶養親族の数になります。年末提出された扶養控除申告書に記載された扶養家族の数をチェックしながら源泉税の計算をするのが通常の計算になります。扶養親族の数が多ければ源泉税額も低くなるため、この扶養親族の把握は源泉税の計算においてとても重要なファクターになります。
平成27年度税制改正において国外に居住する扶養親族を有する従業員は、扶養控除申告書に扶養親族を記載するとともに一定の書類を添付する必要が生じることとなりました。この一定の書類の添付がない場合には税額の計算において国外に居住する親族を扶養にいれてはならないということになったのです。
なぜ改正されることになったの?
改正前までは、たとえ国外に居住していたとしても扶養控除申告書への記載のみで扶養家族に含んでいたのが現状でした。しかし、実際は扶養親族ではないのに扶養家族に含まれているだろうと推定される内容が多数あったのが事実です。会計検査院のしてきもあり、これらを実情に則した課税に改めて行きましょうということでこの制度ができました。
いつから適用されるの?
この改正は平成28年1月1日以降に支払われる給与等について適用されることになります。通常、扶養控除申告書は前年の年末に従業員の方から受け取る場合が多いかと思います。平成28年分は平成27年中に受け取るので、まだ税制改正がおこなわれておらず添付しなくても良いと考えられる方もいます。しかし、たとえ平成27年中に扶養控除申告書をもらったとしても、平成28年に支払われる給与については添付書類があるかどうかにより国外扶養親族を扶養家族に含めるかどうかを決定していかなければなりません。
企業がすべきことは?
企業としてすべきことは、まず国外扶養親族を有する外国人労働者などの従業員をチェックすることが必要になります。その上で早い目に法律が改正された旨を伝え、その従業員に必要な書類を用意してもらう時間を与えることが重要になってきます。
添付書類とは
では、添付書類にはどのようなものが必要になってくるのでしょうか?
具体的は次の2つの書類にあります。なお、以下の書類が外国語で作成されている場合にはその翻訳文を付けなければならないこととされています。
①親族関係書類
親族関係書類は国外居住親族が本当に国内で働く従業員の親族なのかを確認するための書類になります。たとえば、戸籍の附表やパスポートの写しや、外国政府などが発行した戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など親族であることが確認できる書類になります。
②送金関係書類
送金関係書類は、本当にその国外に居住している親族の生活費や教育費を負担するなどの面倒をみているのかを確認する書類になります。送金関係書類にはたとえば、外国送金依頼書やクレジットカードの利用明細書などがこれにあたります。なお、国外扶養親族が複数いる場合には、それぞれにちゃんと送金していることを確認できる上記書類が必要になります。
書類の保存期間
マイナンバー制度の開始によりただでさえ重要書類が増えその書類の管理に頭を悩ませている企業も多いと思います。その上、従業員から国外扶養親族等に係る書類まで預からないといけないとなると、企業側としてはその管理がとても大変になります。できるなら確認ができたら直ぐに処分したいというのが使用者側の本音ではないでしょうか?
しかし、ことはそう簡単ではありません。上記の書類に関して保存年限は定められているわけではありません。しかし、扶養控除申告書の保存期間は7年間であることを考えますと、後々問題になった時に的確に対処できるようにするためにも、7年間保存することが望ましいと言えます。
まとめ
このように企業にとっても、従業員にとってもおおきな負担を強いる税制改正がおこなわれました。国外に扶養親族を有する従業員にとっては、必要な添付書類を集めるだけでも相当の負担があると思います。しかし、企業側としてはこの法律改正の趣旨を理解したうえで的確に対処していく必要があります。もし、仮に従業員から添付書類を集めるのは負担が大きすぎるから無理と言われても、決して添付書類のない国外扶養親族を扶養家族に含めるべきではありません。なぜならその先にはペナルティという少なくない企業負担がまっているからです。