結婚したら給与計算はどうなるの?扶養家族の場合
従業員が結婚したら給与計算はどうなるのでしょうか。ここでは配偶者が扶養家族になる場合について説明します。
給与計算上、共働きは3通りです。ひとつは従業員と結婚した相手の収入が被扶養者の条件を満たしており、従業員の扶養家族となる場合です。ふたつ目は、御社の従業員の収入が被扶養者となる条件を満たしており配偶者の扶養家族となる場合、みっつ目が相手の収入が多く御社の従業員の扶養家族とならない場合です。みっつ目は、別ページを設けて説明していますので、ここでは前2者のうち、給与計算に影響の大きいひとつ目、配偶者を従業員の扶養家族に入れる場合について説明します。
1、源泉所得税がかわります。
従業員の給与から源泉徴収する所得税は、源泉徴収税額表をもとに計算するのでした。税額表には月額表(甲・乙欄)と日額表(甲・乙・丙欄)がありますが、これは雇用形態や契約期間などによっていずれかを選択して使用します。大まかに言えば、ひと月ごとに給与支払いの場合は月額表、日ごとに払う場合には日額表となります。
さて、この税額表には甲・乙・丙などの欄があります。甲欄に扶養親族等の数が記載されています。左列から結婚した従業員の給与額を探し出し、甲欄の扶養家族数のうち該当数の列と交わる箇所にある数字が給与計算時に控除すべき源泉所得税額です。
結婚によって、これまで独身だった従業員に配偶者である扶養家族が増えた場合、甲欄の0人から1人になるとは限りません。
これまで他に扶養家族がいた従業員はさらに扶養家族数が増えることになりますので、注意が必要です。ちなみに、16歳未満の扶養家族がいても、所得税の場面では扶養家族の数に入れないように法律が変わりました。ただし、日本では婚姻可能年齢が女性は16歳、男性18歳からとなっていますので、結婚の場合には考慮する必要はないでしょう。しかし例外もあります。配偶者に子供がいて、結婚後に従業員と養子縁組をした場合です。なおかつその子が従業員の扶養家族になるとしたら、年齢によって被扶養者の数に入るか否かを確認する必要があります。
2、健康保険の手続きをします。
配偶者を健康保険の被扶養者にするには、生活維持の基準を満たしている必要があります。具体的には被保険者である御社の従業員の収入によって生活費の半分以上を賄っている必要があるのですが、それは相手配偶者の収入によって判断されます。
以下の①と②を満たしているならば③によって被扶養の可否が決まります。まず、①被扶養者となる配偶者の年間収入が130万円未満であることです。例外は扶養にはいる配偶者が60歳以上か障害厚生年金の受給資格を満たしている場合には180万円未満であれば被扶養者となることができます。次に②被保険者と同居していること、です。
これら①②を満たしているならば、次は③被扶養者の年間収入が被保険者である御社の従業員の約半分以下であれば被扶養者になることができますし、それを超えていればなれません。
ところで、②を満たしていない場合でも、例外があり、配偶者の年間収入が①の130万円・180万円未満でその額が被保険者からの仕送りなどの金額以下であれば被扶養者となることができるのです。
上記の条件を満たして、被扶養者になれることが分かったら、ようやく手続きに入ります。手続きは健康保険被扶養者(異動)届の用紙の必要箇所に記入し提出してすます。届け出用紙に、従業員のマイナンバーや氏名・生年月日、御社の法人マイナンバーや住所などを正確に記入します。
中段に「配偶者である被扶養者欄」がありますので、ここに配偶者の氏名・生年月日を記入します。続柄は妻か夫かを記入し、被扶養者になった日づけを記入します。記入をしたら会社所轄の年金事務所に事業主から提出をします。
ところで、日本では夫婦の一方が他方の扶養家族になる場合は、被扶養者が妻で、姓の変更をするのも妻であることがまだ多いと思いますが、そうでない場合も増えてきました。結婚によって御社の従業員が配偶者を扶養することになっても、姓だけは配偶者のものを名乗る、ということもあり得ます。
また、姓が変わらなくても住所が変わることは多いと思います。その場合には、上記の届と同時に必要に応じて「健康保険厚生年金保険 被保険者氏名変更(訂正)届」と「健康保険厚生年金保険 被保険者住所変更届」も提出してください。ちなみに被扶養者が増えても保険料に変更はありません。(ただし国民健康保険の場合は違います。)
3、年金も手続きが必要です
配偶者を従業員の扶養家族にする場合には、「国民年金第3号被保険者関係届」を会社所轄の年金事務所に提出します。最上段の欄には被保険者である御社の従業員の氏名・生年月日などを正確に記入します。
その下が被扶養配偶者の欄です。配偶者の氏名・生年月日、性別、資格取得日を記入します。住所については被保険者と同一であれば「同居」と記入するだけで結構です。このような届は通常被保険者と事業主が主体となりますが、この第3号被保険者関係届には、被扶養者となる配偶者の署名または認印が必要です。
右下の角の欄が所定の箇所です。この関係届は資格取得日から5日以内に事業主から会社所轄の年金事務所に提出して手続きをします。この場合、被扶養者が所得税法の規定による控除対象者に該当する場合には、事業主の証明をもって添付書類を省略できます。年金保険料についても被扶養者が増えても保険料の増額などの変更はありません。
4、雇用保険は氏名変更時のみ手続きを
雇用保険は従業員に扶養家族が増えてもとくに変更はありません。ただし、氏名が変更になった場合には「雇用保険被保険者氏名変更届」を事業主から変更後すみやかに所轄のハローワーク(公共職業安定所)に提出して手続きをします。