3分でわかる、雇用保険料はどうやって決まるのか?の説明
雇用保険料は賃金総額から決まる
健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料のいずれもがそうであるように、社会保険料の計算のベースには標準報酬月額が用いられることが多いです。
しかしそんな中、雇用保険料だけは標準報酬月額と無縁です。
雇用保険料の計算は、以下の公式で求められます。
「雇用保険料」 = 「賃金総額」 × 「保険料率」
標準報酬月額ではなく、「賃金総額」に保険料が掛けられている点に注意したいところです。
ここでいう賃金総額とは、4月1日から翌年3月31日までの1年間の賃金の総額のことで、給与明細における総支給額と一致します。通勤手当や家族手当などの諸手当、さらにはボーナスまでをも含めての計算となります。除外されるのは各種祝い金や見舞金といった、労働とは無関係の収入だけです。
これらの点からも、雇用保険がほかの社会保険とは少し違う性格を持っていることが理解できるでしょう。
保険料率は事業区分によって異なる
雇用保険においては、被保険者が職種によって3つの事業に分類され、それぞれ保険料率が異なります。また、雇用保険料は労働者と事業者の双方が一定割合ずつ負担しますが、この割合も業種によって厳密に定められています。
肝心の雇用保険の保険料率については、頻繁に改正されます。そのため、ここで具体的な数値を出して解説しても一般性に欠けてしまうのですが、参考までに平成25年度の保険料率を以下に紹介しておきましょう。
- 一般の事業 … 労働者負担0.5% 事業主負担0.85%
- 農林水産業、清酒製造業 … 労働者負担0.6% 事業主負担0.95%
- 建設の事業 … 労働者負担0.6% 事業主負担1.05%
雇用保険における事業区分
さて、気になる事業区分です。自分の会社がどの事業に分類されるかがまず気になるところでしょう。
農林水産業や清酒製造業、建設業については、読んで字のごとく、どういった業種かが理解できるかと思われます。
念のため、より細かく説明しておくと、農林水産業には土地耕作、開墾、植物栽培、採取、伐採、動物の飼育、水産動植物の採捕、養殖事業、畜産、養蚕といったものが含まれます(園芸サービス事業や酪農、養鶏、養豚などはこちらに含まれません)。
建設の事業には、土木、建築、建設、改造、保存、修理、変更、破壊、飼いたいといった事業が含まれます。
いずれもイメージ通りではないでしょうか。
しかしそんな中、唯一見慣れないのが「一般の事業」という表現ではないでしょうか。この言葉がこの場面とまったく同じ意味で用いられることは、雇用保険関連の分野以外ではありえません。いわば専門用語だといえます。
実は、ここでいう「一般」という言葉に特別な意味はないのです。なにが一般的でなにが一般的でないのか、という考え方をしていると意味を把握することが難しくなるでしょう。
雇用保険における一般の事業とは、農林水産業、清酒製造業、建設事業以外のすべてのものだという認識をしておく必要があります。「一般」という言葉よりも「その他」という言葉のほうが実態に近いかもしれません。
さて、それではどうして農林水産業や清酒製造業の保険料率は割高に設定されているのでしょうか。
これは、雇用実態と受給実態に照らし合わせての現実的な判断です。
これらの業務では、季節によって仕事が目減りしてしまうことが多々あります。農閑期の農家は最も顕著な例でしょう。しかし農閑期にも収入がなければ生活はできません。そこで、その間に失業保険を受給する人が多くなっています。一般の事業と同じ保険料率では、他の業種の人たちが損をしてしまいます。こうした背景から、保険料率が高く設定されているわけです。
もうひとつ、建設業も割高な保険料率が設定されています。こちらは、一般事業とくらべて失業する割合が高い点が原因です。建設関連の仕事では、「大きなプロジェクトの間だけ雇用されて終了と同時に契約満了」という雇用形態も珍しくありません。すると失業保険を受給する機会も必然的に増えます。やはりこちらも、一般の事業と同じ保険料率では不公平です。
保険料が高くなるにもそれなりに合理的な理由があるというわけです。
雇用保険料の免除制度
雇用保険料の計算について解説するからには、免除制度にも触れておかなければなりません。
雇用保険料は、64歳以上の高年齢被保険者の場合、免除してもらうことができます。この免除制度は、高齢者の雇用促進および福祉の充実を図るべく制定されたもので、事業主負担も労働者負担もともに全額免除となります。
ただし、64歳の誕生日がきたら即免除というわけではないので、この点だけは間違えないようにしましょう。
雇用保険料の年度は4月1日から翌年3月31日までで区切られていますから、免除制度が適用されるためにも、4月1日時点で満64歳以上である必要があります。誕生日が4月2日だったとしたら、64歳になっても12か月間は雇用保険料を支払わなくてはなりませんし、3月生まれであれば、余計に払う雇用保険料は1か月分のみです。