給与計算ラボ

業種別の給与計算の注意点

病院や診療所の給与 - 多様で複雑になりがちな給与体系や待遇

給与体系、待遇が多様になりがちな病院、診療所

診療所・病院の給与計算の特徴としては、まず、その複雑性があげられます。ごく小規模の診療所などを除けば、普通は、医師、看護師、事務員、用務員等、様々の職種の人々が働いております。

また、例えば、医師の中でも、外科医、内科医、小児科医、耳鼻科医などの専門職種が分かれます。しかも、その仕事の種類の区別だけでなく、月給制の正社員、時給制のパート職員、日給制の非常勤医師など、その社員としても身分も複雑です。職種が違いますと、その賃金体系も異なりますし、社員としての身分が異なれば、やはり、その賃金体系も異なります。

それらを適正に考慮して賃金を決めなければなりませんから、大変です。しかも、この医師不足の時代ですから、特に医師の給与に関しては、適正な金額を設定しないと、優秀な医師が、別の病院からの引き抜きによって退職してしまい、経営に影響を与えることにもなりかねません。

まず、この給与の設定に最新の注意を払わねばなりません。さらに、医者や看護師などの専門職は、賞与や勤務期間が短い場合でも退職金が出るのが普通です。こられの基本給以外の賃金の設定も、職員の士気に大きな影響を与えますので、しっかりと設定する必要がります。

さらに、医師、看護師は技術職ですから、勤務期間を通じて技術の向上に努めれば、よりすぐれた技術を身に付けることができます。このことは病院にとっても非常に有益な事です。ここで、技能手当や資格手当などの手当を効果的に設定すれば、職員の技術向上意欲を刺激し、良い結果をもたらします。したがって、こういった手当についても、十分に配慮する必要があります。

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複雑で多様な労働時間

続いて、この複雑性を労働時間の面から申しますと、入院病棟を持つ病院は基本的には24時間体制ですから、その勤務シフト計画の作成が大変です。そのシフトも、医師、看護師、用務員などの複数の種類の職員を対象としなければなりませんし、また、当然に深夜労働が必要になりますから、その分の深夜割増賃金のことも考えなければなりません。

さらには、最近の医療関係業務従事者の人手不足の問題から、職員の数の不足を既存の職員の時間外労働でカバーしようとすることもあると思いますが、その場合には、その勤務時間をしっかり把握して、きちんと残業代を支払わねばなりません。その他にも、深夜労働、時間外労働は、労働者に非常な負担をかけます。

ただでさえ、医療関係業務はハードワークなのですから、その上にこれらの要因が加わると、精神的にも肉体的にも変調をきたす者も出てくる可能性があります。賃金の支払の面はもちろんのこと、こういった労働者の方の健康管理にも十分に配慮しなくてはなりません。

ところで、看護師の場合、女性が非常に多いですが、女性は当然に出産することがあると思います。この場合には、現在、労働基準法により、原則として、産前6週間と産後8週間の休業が認められております。また、育児介護休業法により、労働者が申し出ることにより、子が1歳に達するまで(一定の場合には1歳6ヶ月まで)育児休業をとることが認められています。

さらに、子が3歳に達するまでの間、事業主は、労働者に対して、勤務時間の短縮等の措置を講じなくてはなりません。しかも、同法において、事業主は、労働者がこれらの制度を利用したことや、その利用を申し出たことを理由に賃金の減額などの不利益をしてはならないと規定しております。

特に規模の小さい診療所等においては、出産を理由に長期休暇を取られたり、休暇取得後においても休暇取得前と同等の労働条件を維持したりすることは大変かと思いますが、法律は法律ですし、働く女性の権利向上という公益的な目的のために、しっかりと対応しておかなければなりません。このことは、女性の看護師が多く働く診療所や病院にとっては避けれられない問題であります。

増加している待遇や解雇の扱いによる問題

最後に、このことは、診療所や病院に限った事ではありませんが、近年、労働者の職場に対する帰属意識が希薄化しており、何か問題が起こると、会社内で解決しようとしないで、すぐに労働基準監督署に駆け込んだり、労働局のあっせん手続きや労働審判を求めたりする傾向があります。特に問題となるのは、解雇手続きと残業代の未払いです。

解雇問題の場合には、診療所や病院の場合には、専門性が高い分雇用の保障が厚く、他の業種に比べて解雇を巡るトラブルは起きにくいように思えますが、ひとたび問題が発生すると、労働者側の権利意識が高い分、裁判に発展して解決までに非常の長い時間と多額の費用がかかったりして、問題がこじれやすい特色があります。ですから、万一解雇が必要な場合には、解雇手続きに関する法律の規定を遵守しながら、慎重にこれを行う必要があります。

また、解雇の際に未払いの残業代があれば、労働者が労働基準監督署にその違反を申告する可能性が非常に高いですから、そのようなときに慌てないように、日頃から労働時間適切な管理と割増支払いを徹底して行う事が肝要と思われます。

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