標準報酬月額って何?計算方法と申告
標準報酬月額とは
健康保険料や厚生年金は、収入に応じて金額が変わります。
といっても金額に特定の料率をかけて計算するのではなくて、給与を一定のレンジに宛てはめて、金額を決めるのです。
文字通りの報酬額ですが、月額の給与と完全に一致するわけではありません。
いつを基準にして決めるか
4月、5月、6月の給与の平均額を用いて、7月に決まります。
そのため、4月〜6月の残業が多くて報酬が高くなれば、その分標準報酬月額は高くなります。
標準報酬月額のレンジは30等級です。
各種手当てはどこまで含まれる?
標準報酬月額は、毎月受け取るもののすべてが含まれます。
通勤交通費や残業代も報酬に入ります。
同じ基本給であっても、自宅が遠くて交通費が高い人のほうが標準報酬月額は高いですし、4月から6月の残業が多ければ標準報酬月額も高くなります。
仮に通勤定期代を6ヶ月まとめて支払う場合は、本来1ヵ月ごとの支給ですので、1か月分が導入されます。
ですが、見舞金や出張旅費、慶弔費などは労働の対価ではないのでたとえ現金で支給されていても標準報酬月額には含まれません。
ボーナスは?
ボーナスからも保険料を徴収する必要があります。
ですがボーナスの場合は標準報酬月額のような区分はありません。
ボーナス金額に保険料率をかけて計算します。
1000円以下を切り捨てます。これを標準賞与額といいます。
上限は150万円となります。
年金の額を決定します
標準報酬月額は、保険料の計算に使われるだけでなく、受け取る年金の金額にも影響します。
年金を受け取る際は、厚生年金に加入している間の報酬額は一定ではないことを考慮して、加入期間すべての標準報酬月額の平均を計算した、平均標準報酬月額を利用します。
さらにこれに物価調整を加えて算出します。
この金額が高いほど、受け取る年金額も多くなります。
厚生年金は一律ではなく、報酬比例年金だからです。
4月で昇給した場合はどうなる?
新年度を向え、4月から給料が上がった場合はどうなるでしょう。
標準報酬月額は4月〜6月の実績に基づいて、9月から変更になるので、4月〜8月は元の給与になります。低い標準報酬月額が適用されます。
つまり給与の変更があってから実際に適用されるまでは半年の期間があり、実際の報酬と標準報酬月額に乖離があることになります。
最高は62万円
標準報酬月額は、最高で62万円が最高等級になります。
報酬が100万円であっても、62万円に区分されます。
その分年金額も下がるのです。
4月〜6月だけ報酬が多くなったり少なくなったりする業種のために
4月〜6月の報酬で決まるのですが、その期間だけ多忙になったり暇になったりして報酬が乖離する業界のために、昨年7月〜当年6月の月平均の報酬から算出した標準報酬月額と比較して、2等級以上の差がある場合は、標準報酬月額を後者に設定します。
日給、時間給、出来高給の場合
月給でない場合は、同じ事業所で前月に同じような業務に従事して同じような報酬を得た人の報酬の額を使います。
健康保険料と厚生年金の保険料
標準報酬月額は、健康保険の保険料と、厚生年金の保険料の計算基準として使われます。
過小に申告するのはやめましょう
中小企業では、事業所負担を少なくするため不正に標準報酬月額を押さえて申告するケースがあります。これは違法ですのでやめましょう。会社の不正となります。
標準報酬月額が多いと、とられる金額も多くなる
標準報酬月額に応じて控除の金額が決まりますので、給料が増えれば増えるほど、控除の額が大きくなり収める保険料も多くなります。
これは従業員にとっては損なように思われますが、実際は年金を受け取るときに、収めた保険料に応じて厚生年金を受け取ることができますので、多く収めているほうが有利になるのです。
厚生年金は加入者が得する制度ですので、多く収めておいて損はありません。
ですので前向きにとらえて納付することが大切です。
また繰り返しになりますが、負担をおさえるために低い額で申告するのは違反になるのでやめましょう。
従業員自身も、会社に任せきりにせずに、自分自身で給与計算の基礎をおさえて、給与の控除額が正確であるか確認できるような知識を持つと良いでしょう。
40歳からは介護保険も
健康保険ですが、40歳以上の従業員からは介護保険も徴収します。
こちらも標準報酬月額に応じた金額を控除します。
介護保険は健康保険と同じで強制ですので、拒否することはできません。
その代わり本人が老後になり介護状態になった場合に、少ない負担で介護給付を受け取ることができます。
仕組みは改定される
たとえば平成15年まで月額給与だけだったものが、平成15年からボーナスも含めた金額を計算することになったように、法改定によって標準報酬月額の仕組みも改定されますので注意が必要です。
国は財政難ですので、今後も多くを徴収しようとさまざまな改定が行われるでしょう。