給与明細、控除項目とは?控除項目に書く内容をチェック
給与明細の勤怠項目、支給項目、控除項目、支給額欄の4項目のうち、支給項目は事業所によって自由に内容を設定してよいものでしたが、控除項目は法律で決まっているものです。
ちなみに、上記の4項目はそれぞれ独立しているのはありません。勤怠項目の勤怠情報によって支給項目の金額が決まります。支給項目はおおまかにいえば従業員に払うべきプラス計算をする金額を記載しています。次に支給項目にある金額から控除項目の金額をマイナスしていきます。そして算出した金額が支給額欄に記載され、その支給額が従業員に実際に支払われる金額です。
しかし、控除項目とは従業員の給与から差し引いてよい金額だな、と理解するとこれは誤解です。控除した金額は決して会社のお金ではありません。
本来ならば従業員ひとりひとりが支払うべき税金その他を、会社がまとめて全員分支払うための控除額を記載するのが控除項目です。つまり、従業員から預かっているに過ぎず、それは法律に従って税務署その他に納めなければなりません。
控除項目は大きく2つに分けられます。ひとつは社会保険料。もうひとつは税金です。それぞれ具体的に見て行きましょう。
(1) 社会保険料
従業員が負担すべき社会保険料を給与から控除するのですが、控除はすべて前月分を控除するということに注意が必要です。4月に入社した社員の社会保険料は、5月に払う給与から初めて社会保険料を控除します。
また、社会保険料の計算は月単位です。この点間違いやすいのが入社・退社時、年齢による資格喪失の取り扱いです。入社日がその月の1日でも15日でも28日でも月単位計算なので一か月分の社会保険料を翌月の給与から控除します。それに対して退社と資格喪失の場合は、29日に退社・資格喪失しても、月末までまるまる就業していない限り控除する必要はありません。
1 健康保険料
健康保険料のうち、従業員が負担する金額を給与から控除します。健康保険法に定められています。健康保険は75歳で被保険者としての資格を喪失します。従業員が75歳になったら、その誕生日当日が資格喪失日となります。
ちなみに、この健康保険料と②厚生年金保険料、③介護保険料についての保険料額の決定、計算方法、徴収方法は同じです。
2 厚生年金保険料
厚生年金保険料のうち、従業員が負担する金額を給与から控除します。厚生年金保険法によって定められています。厚生年金保険は、70歳になった日に被保険者の資格を喪失します。健康保険と違って厚生年金の場合は従業員の70歳の誕生日の前日で資格を喪失します。
3 介護保険料
介護保険料のうち、従業員が負担する金額を給与から控除します。介護保険法に定められています。介護保険料は健康保険の被保険者のうち40歳以上65歳未満の従業員について控除します。ここでは、従業員が40歳になる誕生日の前日から介護保険の被保険者となります。そうすると、例えば7月1日が誕生日の場合、前日の6月30日から被保険者になります。社会保険料の控除は翌月の給与から控除しますので、7月の給与から控除する必要があるのです。7月2日誕生日の人と同月の誕生日であっても、控除月は一か月違いますので、注意が必要です。
4 雇用保険料
雇用保険は従業員が将来、万一失業した場合に支給される基本手当などの求職者手当などの給付のために、従業員が被保険者となって加入する保険であり、その毎月の保険料を控除します。
ほとんどの従業員は一般被保険者となります。1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上雇用される見込みのある従業員はすべてこの一般被保険者にあたります。それ以外は雇用保険料を控除しなくてもよいのかというと、短期雇用特例被保険者、高年齢継続被保険者、日雇労働被保険者もありますので、注意が必要です。
また、健康保険と介護保険、厚生年金保険は、標準報酬月額をもとに算出するので、保険料が毎月変わる、ということはありませんが、この雇用保険料は計算方法が違い、毎月変動します。というのは、雇用保険は給与支払いのたびに賃金総額に雇用保険料率をかけて算定するからです。賃金総額は残業手当などで毎月変動しますから、それをもとに計算する雇用保険料も毎月変動するというわけです。
(2) 税金(源泉徴収税)
1 所得税
課税対象額が決まったら、源泉徴収税額表にあてはめ、扶養親族等の数によって該当金額を記載します。所得税は国が課す国税です。
2 住民税
住民税は国ではなく市区町村が課す税金です。住民税の徴収方法は2つあり、普通徴収と特別徴収といいます。事業主が給与から控除して従業員のかわりに自治体に納める方法が特別徴収です。役所から特別徴収税額の通知書が毎年5月頃に送られてきますので、その通知された額を毎月控除します。
(3) ところで源泉とは? ~水の湧き出る場所でとる~
給与からまえもって預かって税務署に納めることを源泉徴収といいます。水の湧き出る源で徴収する、という言葉になっています。これは収入の発生する源、つまり会社などでの給与支払いの場面で課税して徴収しておく、ということです。本来、税金を課税して納めさせるのは国や自治体の仕事のはずですが、人を雇用する場合にはその役所の仕事を事業主が任されているのです。