業種によってこんなに違う!給与明細の項目を見てみよう
給与明細の項目は、おおきく4項目にわかれています。その4項目とは、勤怠項目、支給項目、控除項目、支給額、の4つです。この4つの差し引きで支給額が決定するという基本はどの業種も同じです。しかし4項目の内訳が、業種によって異なることもあり、業種独特の項目内訳も存在します。
まずは、最低限の基本形を見て、そのあと業種によって変更・追加されがちな項目内容を見ていきましょう。
基本形となる給与明細の項目
勤怠項目は、出勤状況などを示す給与計算における従業員の基本情報です。有給休暇をとっても基本給に影響はありませんが、欠勤があるとその日数分の給与が基本給からひかれる、というように利用する情報です。
支給項目は、基本給や残業・住宅・家族などの諸手当からなります。従業員から見れば金額がプラスになる項目(例外もあります)です。ここは業種によって、また職種や働く形態によってさまざまに各事業主が設定しています。
控除項目は、支給項目で算出した金額から差し引かれる金額の内訳です。税金や社会保障料などがそれにあたります。これらは法律で決まっているものですので業種によって計算料率の違いはあっても払うべき保険料はどこも同じです。ただし、ここに法定以外の控除項目を追加している場合もあります。たとえば旅行積み立て金や、民間の生命保険料、財形積立金など自由意思で会社に預けるお金です。
支給額欄は、勤怠項目の情報できまった支給額項目の金額から控除項目の金額を引いて実際に従業員に支給する金額を記載する欄です。
以上がどの業種にも共通のだいたいの基本形です。
業種や職種によって異なる賃金形態のちがい
1. 勤務時間によって賃金が変わる時間賃金の業種
これは上記の基本形のうち勤怠項目と支給項目における違いが表れます。たとえば、日給制での賃金です。日雇いの作業員を多く雇用するような業種である建設関係や土木関係、1日限りや短時間のみのイベントや調査に関するアルバイトを要するコンサート会場設営業種や官公庁の調査を請け負う業種などが、月額の固定基本給ではなく何日または何時間働いたか、という勤怠情報と基本給の計算で賃金を算出します。
そのため勤怠項目に出勤日数しかなかったり、就労時間しかなかったりします。このように時間を計算の基準とする賃金を時間賃金といい、支給欄では固定基本給の欄のかわりに時間給や日給の合計額の欄が設けられます。
2. 指名料や歩合に相当する個数賃金
上記①は時間を給与計算のもとにしていましたが、こちらは出来高、能率、業績をもとに計算される賃金形態です。
たとえば、美容師。基本固定給があっても他業種に比べて安価に設定しておき、技術を磨いて顧客の指名を受けた場合の指名料と、そのさいの施術料金の一部を美容師の給与に加算するのが一般的です。その場合、基本固定給部分は基本形と同様に勤怠情報から算出しますがあくまでそこは定額。支給項目に指名料、シャンプーやカット、その他の高度技術の施術に関する歩合の欄が設けられます。
また、製品をひとつつくったらいくら、というような給与形態も個数賃金の一種です。お土産品・工芸品の製造業、IT関係のプログラム業など多くの業種が採用している賃金形態です。その場合勤怠項目と支給項目は大きくかわり、個数×単価、というような欄を設けます。
また、これほど短期でなくても半年間のプロジェクトに対する報酬、というように受注した仕事の完成までを区切りとするような色々な建設設計、機械設計その他の業種のアウトソーシングなどの場面では、やはり有給休暇や欠勤などの計算は無関係になり請負契約による報酬額が支給額に記載されることになります。
3. フレックス制では勤怠項目が大きく変わる
フレックス制を採用している事業所では勤怠項目が大きくかわります。ことに完全フレックス制の場合は、きまった出勤・退勤時間がない限り、週当たりの労働時間が決まっています。それに満たない場合は基本形の欠勤同様、基本給から差し引かれますし、それを超えれば時間外手当で割足賃金が支給されます。このようなことから勤怠項目と支給項目の内訳や記載法に変更が生じます。また、従業員ごとの複雑な勤怠情報と給与計算の必要性から、当然にコンピュータでの管理が必要です。フレックス制を採用している業種はIT,各種メーカーなどさまざまですが、その多くは大規模企業です。柔軟な勤務形態を社員に提供することで能率と業績、創造性のアップなどを図る目的でしょうが、これは中小企業にとっては給与計算やその他の経費の観点からもなかなか難しいものです。ただし、小規模企業であっても、プロジェクトや工業製品の製造などの請負業ではフレックス性が効率的なこともあるでしょう。
事業者によって大きく異なる各種手当の違い
支給項目内の各種手当ほど、給与明細のなかで事業者ごとにバラエティ豊かな項目はありません。手当は事業主の考えによって無限の種類があるからです。
法律で決まっている残業手当や休日出勤手当は当然なければなりませんが、自由裁量のものは多岐にわたります。
たとえば、資格手当。弁護士事務所で働く事務員が志保試験に合格したとしたら資格手当をつける。これは他の事務員より専門知識があり事務所に有用だからです。同じ従業員が司法修習を終えて弁護士登録をしたとしたら、これは弁護士として顧客の案件を処理できるようになりますから、基本給に加えて報酬の支払いが多くなるでしょう。場合によっては事務所に在籍したまま独立の個人弁護士として業務をし、事務所には事務所の使用料を支払う、というような支払う立場の逆転が起こる可能性もあります。
そして業績手当、ひととき注目されたホスト業はどうでしょう。出勤をしていればもらえる基本給に加えて顧客の指名料、オーダー商品代のバック、などの諸手当が支給項目に入ります。
孤独に冬を過ごす手当。灯台守というお仕事はご存知ですか。北海道の北で流氷がびっしり集まり身動きができなくなった海岸に立つ灯台でただ一人冬を過ごして灯台の番をします。この仕事は基本給というよりも、この孤独に冬を過ごし、極寒の場所で暮らす経費や知恵、その他もろもろに対して手厚い手当が付加されます。
危険手当はご存知でしょうか。沖縄では船で海に出て、ダイビングスーツに身をつつみ海中に潜って爆弾処理をする会社があります。海中で作業するだけでも体力を消耗し、リゾートダイビングでは考えられないほど危険ですが、さらに爆弾を海中で処理するのです。こういう場合に危険手当で優遇します。
従業員への心遣い - 事業主からの感謝の気持ちの表し方
業種によって、企業によって給与明細の項目はさまざまです。基本形を踏まえたあとは自由に創設できる手当は事業主から従業員への心遣い、と考えればおのずからその項目も決まってくるでしょう。