給与計算ラボ

給与の年末調整と確定申告

最低限知っておきたい中小企業における年末調整に関する必要事項

最低限知っておきたい年末調整に関する必要事項

従業員に支払う給料が一定額以上であった場合、源泉所得税を徴収して税務署に納付します。

最低限知っておきたい年末調整に必要な書類の1つめは、給与所得者の扶養控除等申告書です。対象は、扶養家族がいる従業員です。配偶者がいる場合、子どもがいる場合、16歳未満の扶養親族がいる場合、障がい者がいる場合などです。
配偶者にも給与があり、その額が103万円以下であれば該当します。記入は、配偶者の給与額そのままではなく65万円を引いた額です。扶養親族が70歳以上、大学生、高校生などの場合、特別な扶養親族控除対象扶養親族となります。

必要書類の2つめは、給与所得者の保険料控除申告兼給与所得者の配偶者特別控除申告書です。
保険料の控除は、社会保険料控除や生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、そして地震保険料控除も対象となります。
学資保険も生命保険料控除の対象となります。これらに対して支払いをしているという証明が必要です。
国民年金や国民健康保険など社会保険料と言われる保険料を支払っている場合は、日本年金機構が発行する社会保険料控除証明書が必要です。11月上旬に発行されるため、10月以降の支払いを証明する場合は領収証書の原本が必要です。
健康保険の任意継続の支払いも同様になります。
生命保険料控除の場合、保険会社から送られる生命保険料控除証明書が必要です。
心身の疾病や傷害等により生命保険会社などから医療費の精算によって保険金等が支払われる保険契約も対象となり、旧簡易生命保険契約または生命共済契約なども同様ですが、保険契約期間が5年未満で、貯蓄保険や貯蓄共済は対象外になります。

地震保険料控除は、本人や生計を一にする配偶者、その他の親族が所有している住まいとする家屋や生活用動産が対象となります。別荘などのように普段は住まいとして使われていないものは対象にはなりません。
平成18年12月31日までに加入した旧長期損害保険契約も地震保険料控除の一部となります。旧長期損害保険契約は、それまでの損害保険料控除で満期保険金があり、保険期間は10年以上であることが条件です。
地震保険料控除と旧長期損害保険契約の支払いが同一の証明書に記載されている場合、いずれかの証明額による控除額となります。

個人型の確定拠出年金に掛け金を支払っている場合は、それを証明する書類が必要です。
小規模企業共済に加入し、共済契約の掛金を支払った場合、小規模企業共済掛金払込証明書が必要です。
旧第二種共済契約の掛金はこの控除ではなく生命保険料の控除になります。
確定拠出年金法による企業型年金の加入者や個人型年金の加入者も控除の対象となります。
心身障害者扶養共済制度により地方公共団体に掛金を支払った場合、支払った掛金の証明書が必要です。

配偶者特別控除を受ける場合、配偶者の年収は、103万円を超えていて且つ141万円以下であることが条件です。
源泉徴収票など、配偶者の収入を証明するものが必要となります。
この時、配偶者が申告する人とは異なる人の扶養親族となっていないことも条件です。
申告する人は、年収が12,315,790円以下であることが条件となります。

3つめは給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書です。
従業員が2年目以降の住宅ローン控除をする場合、確定申告をした年の10月頃に税務署から送付される年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書が必要です。これに加え、申告書、借入金の年末残高等証明書が必要です。

年内に転職をしてきた従業員の場合、年末調整を行います。その従業員が前に在籍していた会社の源泉徴収票が必要となります。

本年の12月中に給与の支払いを受けた後に退職した人も年末調整を行います。死亡退職した人も同様です。
年内に退職した人の場合、年末調整は行いません。
年末調整にやり直しがあることも最低限知っておきたいことです。本年の12月31日までに扶養親族の増加などがあった場合は年末調整のやり直しをする必要があります。
やり直しは、給与所得の源泉徴収票を交付する翌年の1月末日までに行います。
また、翌年1月末日までに従業員より住宅借入金等特別控除申告書の提出があった場合、年末調整をやり直します。

徴収しすぎた税金を還付は税務署でなく、税金を預かっている会社が行います。
従業員に還付をした分を、税務署に納付する分から差し引くため、従業員から預かった税額が減額され、税務署に納付する税額も少なくなるため企業が損をするということはありません。
税金の保管方法は法律で定められていないため、税務署への納付や従業員への還付の際、万が一、資金に困らないよう専用口座を開設し、その口座に源泉徴収するごとに預け入れをしておくという管理方法もあります。
或いは、毎月の給与を支払う際、給与についての源泉所得税を納付しておくというのも1つの手段です。

最低限知っておきたい年末調整にも関わるマイナンバーの導入について

平成28年1月1日より、マイナンバー制度が実施されます。
マイナンバーの導入により、年末調整に必要な給与所得者の扶養控除等申告書、給与所得者の保険料控除申告兼給与所得者の配偶者特別控除申告書に最低限知っておきたい変更があります。税務署・市区町村に提出する平成28年分給与所得の源泉徴収票を作る際に従業員のマイナンバーが必要となります。
16歳未満の扶養親族の場合でも、住民税の扶養控除などでマイナンバーが必要となります。
企業に対しては、マイナンバーとは別の法人番号も割り当てられます。
平成27年の年末調整では個人番号、法人番号の記載は不要です。

平成28年以降に行う年末調整の時点では、企業は従業員のマイナンバーを把握している状況となります。
マイナンバーの確認については、企業が把握している番号と比較する必要があります。
WEB申告書など、電子データとなっている場合、パソコンによるマッチングシステムが利用できれば大きな負担となることはありません。
しかし、目視による検証の場合であれば、作業の負荷は大きくなります。年末調整の申告書をシステムから出力する場合、氏名、住所、扶養家族、保険の種類などを予めプリントアウトして従業員に配布するケースが増える可能性が考えられています。
これは、従業員がそれぞれ内容を確認することで、企業はマッチング作業という負担を減らすことができます。
マイナンバーについても同様と考えられます。
以前は個人番号は本人が記載するものであるためプリントアウトに関して行政は反対の考えでした。
原則として、個人番号は本人記載が正しいのですが、
以前から氏名や住などプリントしていて従業員がそのことを承諾している場合に限り、
個人番号もプリントアウトして差し支えない見解を最近の行政では示しています。

ただし、扶養控除等申告書等にマイナンバーを入力して配布することになるので、他者からは見えない方法などセキュリティ対策が必要となります。
企業はマイナンバーを利用するにあたって、プライバシーの保護を重視し、番号管理の十分な検討やセキュリティに対する社員教育を取り入れることが望ましいです。
また、従業員が退職した場合は速やかにマイナンバーを廃棄することも必要です。
マイナンバーを利用した記録は全て残さなければなりません。手続きを専門の業者に委託した場合には、その手続きを行う業者を管理する責任があります。

給与所得者の扶養控除等申告書について、配偶者控除や扶養控除、障がい者控除などの受けるための必要書類で、マイナンバー制度が導入されると記入欄が設けられ、扶養親族のマイナンバーも記載が必要になります。
配偶者特別控除申告書にもマイナンバーの記載が必要になります。保険料控除申告書は
給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書の右側にあり、マイナンバーの記載が必要になります。
これらの申告書を提出された場合は、その申告書に法人番号を付記する必要があります。
企業の法人番号を予めプリントして、従業員に配布しても差し支えありません。
その他に番号確認については、一度でも本人確認を行って作成した個人情報ファイル
を参照することによって確認したと認められています。
身元確認については、採用時など従業員に直接本人であることを確認している場合には
身元確認書類の提示は必要ありません。扶養親族など本人確認のうち
身元確認については、給与所得者がその扶養親族などを本人確認することにより、身元確認書類の提示の必要はありません。

企業が従業員からマイナンバーを取得する場合、必ず本人確認が必要です。
番号確認と身元確認を合わせて行った場合に本人確認となります。個人番号カードを取得している場合は個人番号カードや、
個人番号カードを取得していない場合は通知カードと運転免許証、健康保険の被保険者証などの併用で確認を行います。
年末調整に必要な書類も同様ですが、扶養控除等申告書を提出時における扶養親族の本人確認は扶養者にあたる従業員が行います。従業員が何らかの理由でマイナンバーが記載された書類を紛失、情報漏えいした場合、企業は責任を問われません。
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書にはマイナンバーを記載する必要はありません。


雇用保険被保険者資格取得届、厚生年金保険の被保険者取得届、健康保険被保険者資格届、源泉徴収票などを作成する際、従業員のマイナンバーを記載する必要があります。
平成28年1月以後の源泉徴収票には、給与所得者本人、控除対象配偶者及び控除対象扶養親族などにおける個人番号を記載する必要があります。

最低限知っておきたいことは、平成27年の年末調整における必要書類にマイナンバー記載の必要はありません。
しかし。平成28年の年末調整からは必要となります。
あらゆる書類において平成28年1月からマイナンバーの記載を必要とする新たらしい形式へと移行していきます。
早めの対策が重要となってきます。

最低限知っておきたい年末調整の書き方とマイナンバーを合わせた記入

平成28年度より、給与所得者の扶養控除等申告書の様式が変更されます。
給与支払者の法人番号、本人および扶養親族の個人番号、非居住者である親族、生計を一にする事実、控除対象外国外扶養親族の欄が追加されます。これらは最低限知っておきたいことです。

配偶者控除に該当する場合、配偶者の年収が103万円以下(給与所得控除額65万円)、配偶者が65歳未満で年収が公的年金のみの場合は108万円以下(公的年金等控除額70万円)、配偶者が65歳以上で収入が公的年金のみの場合は158万円以下(公的年金等控除額120万円)で、パート収入の場合は給与所得の欄に記入します。

配偶者の生年月日が昭和22年1月1日以前、つまり平成28年12月31日時点で70歳以上の場合は老人控除対象配偶者となります。
老人控除対象配偶者は控除額48万円になります。一般の控除額は38万円です。

生年月日が平成13年1月1日以前、つまり本年12月31日の年齢が16歳以上で平成28年における所得の見積額が38万円以下の場合、控除対象扶養親族の欄に記入します。平成6年1月2日~平成10年1月1日生、つまり19歳以上23歳未満の場合、特定扶養親族になります。控除額が63万円あります。一般の控除額は38万円です。

昭和22年1月1日以前に生まれた人で、納税者またはその配偶者の直系の父母・祖父母などで、納税者またはその配偶者と同居している場合、同居老親等となります。同居していない場合は、その他となります。

ここで、追加された非居住者とは、日本国内に住所を有していない人、或いは住所が日本国内でなく、日本国内に居所している期間が1年未満の場合に該当する人を指します。長期にわたって海外へ留学している場合も該当します。

平成28年中に留学中の親族に送金をした場合はその合計額を生計を一にする事実の欄に記入します。
平成27年に提出する場合は空欄で提出し、平成28年の年末調整で記入します。
平成27年度の税制改正によって、所得税の一部が改正されました。国外居住親族に係る扶養控除等、源泉徴収を行う人に提出、または提示しなければならない書類が追加されました。

扶養控除の適用を受けるための非居住者が必要となる書類は、親族であることを証明する親族関係書類が必要です。
戸籍の附票の写し、国または地方公共団体が発行した書類および国外居住親族のパスポートの写し、外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類で国外居住親族の氏名、生年月日および住所または居所の記載があるもの、 戸籍謄本や出生証明書がこれにあたります。また、婚姻証明書が親族であることを証明す書類に該当します。

そして、同一生計であることを証明する送金関係書類が必要です。
日本国内の居住者から国外居住親族へ、金融機関が行う為替取引による支払いを行ったことを明らかにする書類、またはその写しが必要です。
また、国外居住親族がクレジットカードの発行会社から交付を受けたカードの提示による商品購入などにより、その商品購入の代金に相当する金額をその居住者本人から受領したか受領する予定であることを明らかにする書類が必要です。
年末調整を行う年内において送金した外国送金依頼書の控えであれば送金関係書類となります。
クレジットカードの利用明細書も送金関係書類に該当します。
国外居住親族が利用するクレジットカードで、利用代金は日本国内の居住者が支払う契約をクレジットカードの発行会社と結んで利用された利用明細書です。 利用明細書は家族が名義人となっている国外居住親族の送金関係書類として取り扱います。
クレジットカードの利用明細書は利用日の年分によるものであり、支払い日の年分での送金関係書類にはなりません。

他の所得者が控除を受ける扶養親族等の欄には、生計を一にする給与所得者が2人以上いる場合、扶養親族などを誰の扶養親族とするか記入します。氏名、続柄、住所または住居、異動月日および事由欄があります。
このうち、氏名と続柄、住所または住居は、控除を受ける他の所得者について記入します。

16歳未満は所得税の扶養控除の対象にはなりませんが住民税には影響します。
16歳未満の扶養親族も必ず記入します。住民税に関する事項欄に氏名、個人番号、続柄、生年月日、住所または住居を記載します。この欄に控除対象外国外扶養親族の欄があります。そして、異動月日および事由欄があります。
これらの欄にも必要事項があれば記入をし、無ければ記載せず空欄にします。

これらの記入事項を従業員が行い、企業は記入された内容を確認し、企業が記入する欄には必要事項を記入します。
給与の支払者の名称欄に企業名、給与の支払者の法人番号欄に法人番号、給与の支払者の所在地欄に所在地を記入します。
変更や追加事項に伴い作業も増え、負荷が大きくなりますが、最低限知っておきたい内容です。

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