給与計算ラボ

支給と控除、社会保険

よくある質問No1!所得税の計算方法を詳しく解説します

所得税は、大きくふたつに分けることができます。給与計算における所得税とは、従業員個人の1年間の所得に課税される国税のことをいいますが、法人の所得に課せられる法人税や住民税、事業税なども広い意味での所得税です。後者の広い意味での、という点から「広義の所得税」というのに対し前者を「狭義の所得税」といいます。狭義の所得税については所得税法という法律で規定されています。給与計算に関する当サイトでは、この狭義の所得時のうち、給与計算に関わる給与所得の所得税について、その計算方法までと解説します。

(1)所得税

個人の所得に課税される所得税ですが、そもそも個人の所得にはいろいろな種類があります。利子や配当、不動産を所得した場合、個人事業で所得をした場合、勤労によって所得をした場合など10種類の所得があるのです。

(2)源泉徴収義務者

源泉徴収義務者とは、従業員のかわりに所得税を納める、人を雇っているもののことです。「源泉徴収による国税を徴収して国に納付しなければならないもの」(国税通則法2条5号)とされています。
つまり法律によって人を雇っている事業所は、給料の支払額に応じた所得税を差し引いて、給与支払いの翌月10日までに給与を受け取った従業員にかわって事業所から国に納める義務があるのです。

そこで、従業員それぞれの給与に応じて所得税をいくら差し引けばよいのか、所得税の計算方法を具体的に説明します。

(3)給与から差し引く所得税の計算方法

前述のとおり、所得税はその従業員の1年間の所得に課税されますので、正確な所得税額は年末の最後の給与額が確定するまではっきりしません。そこで、毎月だいたいの所得税を払っておき、生じた差額については年末調整で調整することになります。

この毎月払っておく、だいたいの所得税が源泉徴収税です。

  1. 源泉徴収税額は扶養親族数の数によってかわりますので、毎年1月の給与までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、数を把握しておきます。
  2. 次に、従業員に払う給与から社会保険料と通勤手当を差し引きます。その残額が課税対象額となります。
  3. 課税対象額を「源泉徴収税額表」の該当欄にあてはめれば、その従業員の源泉徴収税額がわかります。

(4)源泉徴収税額表のつかいかた

源泉徴収税額表には、月額表と日額表のふたつの種類があります。また、賞与については賞与用の税額表を別途用います。会社をはじめとする事業所においては、多くの場合給与は日給月給か月給制です。このように月々給与を払う場合には、月額表を使います。

月額表は甲欄と乙欄に分かれています。甲欄はさらに扶養親族等の数ごとに分かれています。そこで、いちばん左の縦列の欄から、その従業員の給与の課税対象額を選び、甲欄の該当する扶養親族数の列と交わる欄の金額が源泉徴収税額です。
一方、乙欄は区分されておらず、それぞれの課税対象額については一種類の税額のみ記載されています。これは、扶養控除等(異動)申告書を提出しなかった従業員の場合に用いる欄です。

つまり、扶養する親族のいる従業員については甲欄を使い、そうでない場合には乙欄を使って源泉徴収額を調べるようになっているのです。

ちなみに、半月ごと、十日ごとに給与を支払う場合にも月額表を使います。それぞれ一か月分に換算して表を使えばよいのです。

たとえば半月ごとに給与を支払う場合には、半月分の給与を2倍すれば一か月あたりの給与課税額となります。それに応じて甲乙欄から税額を見つけます。税額は一か月あたりのものですから、実際の半月分の給与からは、見つけた税額の2分の1を源泉徴収することになります。同様に、10日ごと支払いの給与の場合には、3倍して1か月あたりの給与か税額を出して、表の課税額を3分の1して源泉徴収をします。

(5)源泉徴収した税金はどうするの?

従業員の給与計算によって控除した源泉所得税は、従業員が税務署に払うべき金額を、御社が一時預かっているにすぎません。ですからこれを他に流用することはできません。
具体的には、給与から控除した源泉所得税は、給与を払った月の翌月10日までに所轄の税務署に納付します。その10日が日曜祝日の場合には翌営業日、土曜日の場合に翌々営業日に納めてよいことになっています。

また、小規模事業所(常時使用している労働者が10人未満の事業所のこと)の場合には、毎月10日ではなく年に2回まとめて納付することができます。これを納期の特例といいます。
この特例を受けている事業所は毎年1月1日から6月30日までに従業員から預かった源泉所得税は7月10までに、7月1日から12月31日の間に預かった分については翌年の1月20日までに納付します。

この納期の特例によって納付する場合には、「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納期特例分)」に所定事項を記入して源泉所得税に添えて納付します。

実際には各事業所は取引金融機関(銀行や郵便局)から税務署に納付します。

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