有給休暇の記録の仕方と適用の範囲
労働基準法には、有給休暇の記録の義務はない
労働者を守る労働基準法には、有給休暇を記録するように義務付けた文章はありません。
ですが、労働基準法が規定している賃金台帳には、他の事項とともに、年休利用日数も記載するように定められています。
有給休暇は労働者の権利であり、労働者の求めがあれば会社は有給を付与しなくてはなりません。
その際に会社は有給の利用実績を記録しておかなければ、過剰な有給の請求があった際に退けられなくなります。
逆に労働者側は、自分自身で有給休暇を把握しておかなければ、きちんとした有給休暇を請求できなくなります。
このため、有給休暇は書面で記録しておくべきでしょう。
会社側には時期変更権があります
労働者の求めに応じて与える必要がある有給休暇ですが、会社側には時期変更件があります。そのため繁忙期などは、有給を取りたいといわれても、却下して別の時期に変更してもらうように要請することができるのです。
有給休暇は事前申請
有給休暇は事前申請となります。そのため当日欠勤や遅刻を有給で代用すると言うのは好ましくありません。
また欠勤してしまったものを会社が勝手に有給休暇にすることもできませんのでご注意ください。
パートタイムやアルバイトでも有給休暇はもらえます
有給休暇は労働者の権利です。フルタイムでなくとも有給はもらえます。
ただし入社して半年以上の勤務と、その間の労働日の8割以上を勤務した実績が必要です。
有給の上限は20日となっています。
契約社員でも同様で、労働基準法が適用されますので、有給休暇は正社員と同様、同数の有給休暇が付与されます。利用条件もまったく同じです。
有給休暇の積極的利用
日本は有給休暇の取得率が低く、人事評価の際も有給の取得率が関係あるといわれています。あまり休まず、残業をし、在席時間が長い人を評価する傾向にあるのです。
ですが有給休暇の取得率が低いことは社会的課題です。
会社が積極的に社員に有給を呼びかけて、社員の自由時間の確保や疲労回復、充実した社会人人生への寄与に貢献しましょう。
会社が休みだが有給休暇がなくなってしまった場合
たとえば10日の有給があって工場が休業する場合、10日以下の有給しかない従業員がいるとします。その場合、出勤したくとも工場がお休みですので出勤できません。
この場合は会社、つまり使用者の責に帰すべき事由のある欠勤とみなされることとなり、休業手当を請求することが可能です。休業手当は60%になります。
計画的付与
会社が積極的に有給の利用を促進するために、計画的に付与する場合があります。
夏季休暇や年末年始に有給を加えて大型連休としたり、飛び石連休の間に取得させて長居連休としたり、従業員の結婚記念日や子供の誕生日など、事前にわかっている日を有給としたり、業務に支障をきたさない範囲で閑散期に取得させたりなどしましょう。
有給を与えないのは違法です
中小企業などでは、面接時に、「うちの会社には有給休暇がありません」等を宣言する会社も散見されます。
ですが有給は労働者の権利であり、与えないことは違法です。
労働者から有給休暇の申請があれば、会社は無理に働かせることはできないのです。
退職時に一括して有給を使う場合
退職前に、貯まった有給休暇を一気に消化することは、業務に支障が出ない限り認められます。
有給休暇は一年あたり最大20日付与ですが、繰越ができるため最大40日まで取得できることになります。
労働者が退職前に有給を使い、1ヶ月以上に渡って出勤しなかったとしても、それは労働者の権利の行使であり、給料の支払い対象になります。
在宅勤務者の取り扱い
テレワークの普及にしたがって、在宅勤務者がも増えてきました。
在宅勤務の方の有給の取り扱いはどうなるでしょうか。
厚生労働省のガイドラインによりますと、在宅勤務であっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働基準関係法令が適用されます。
つまり在宅勤務者であっても労働基準法の対象となり、有給休暇を取得することができます。
在宅だから例外と言うわけではなく、労働基準法に準拠した取り扱いが必要です。
当日の突発的な有給休暇の取得について
たとえば就業規則で、有給は○日前までに事前申請するものとする、といった取り決めがあるとします。
その際に、労働者が突然休み、その日を有給にしたいと申し出たとします。
この場合、会社と労働者でトラブルになった場合はどちらが正しいのでしょうか。
当日の欠勤は会社に迷惑を与えるものであり、困ります。
ですが労働基準法には、労働者の求めに応じて有給を付与する義務が会社にはあり、当日の連絡であっても有給を付与するようなルールが定められています。
一般的にはこれは会社側が正しいのです。
業務に支障があるとわかっていながら当日休むということは、労働者側の権利の乱用となります。
ですが急病や事故の際などのやむを得ない場合は、この限りではありません。