給与計算ラボ

業種別の給与計算の注意点

塾や予備校の給与計算 - 競争の激しい講師などの待遇の管理

塾や予備校の給与計算の特徴としては、まず第一に、質の高い先生(職員)を確保することは塾や予備校にとって生命線です。質の高い職員を確保するためには、給与をどのくらいに設定するかということは極めて大切です。ですから、その目的に照らして適切な水準に賃金を設定しなければならないことが挙げられます。

ちなみに、厚生労働省が発表した平成24年度賃金統計基本統計調査によると、個人教師・塾・予備校講師で34.3歳・勤続年数7.1年ほどの労働者で平均年収約392万円、平均の月給が27.5万円、平均の年間賞与額が39.2万円となっております。産業全体の年収は男子の41.7歳・勤続11.8歳で約298万円ですから、相当に高い水準にあります。また、規模別に見ますと、10~99人の事業に勤める人の平均年収は365万円、1,000人以上の規模では392万円です。

また、男性講師の平均年収は407万円、女性講師の平均年収は303万円です。規模別では、1,000人以上の従業員が所属する大規模な事業所が、若干年収が高い傾向があります。また、男性講師と女性講師を比較した場合、男性の方が相当に年収が高くなります。

また、男性講師の場合、年齢と勤続年数が増加するとともに年収は上昇する傾向がありますが、女性は年齢や勤続年数が増加してもあまり年収が変わらないという傾向があります。塾・予備校の講師の年収の一般的な相場はだいたいこれくらいですから、これを参考にして、他の塾や予備校に劣らないように、適切な水準の賃金を設定して、優秀な先生を確保することが重要です。

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労務の管理とメンタルの保護

第二に、労務管理全般についてですが、おなじく24年度の基本統計調査では、塾や予備校の労働者の平均残業時間は月平均5時間で非常に少ないと言えます。過労により脳梗塞や心筋梗塞が発生する可能性が急速に高まるとされるめやすは月100時間の時間外労働が発生した場合ですから、この基準に比べればほとんど問題ない水準と言えます。また、塾や講師の先生という立場上、トラブルをおこすことも非常に少ないと考えられます。従いまして、賃金の設定を除けば、一般職員のその他の労務管理は比較的楽であると考えられます。

ただし、こういう職業の場合、精神的なストレスが問題となる場合もあります。よって、注意の方向をこちらのほうに向けなければなりません。このようなメンタル的なストレスは、例えば、講師の間で、自分が担当した生徒が有名校に何人合格させたかを競わせることがよくありますが、それらが、適度な水準の競争ならばそれは問題ないのですが、過度なプレッシャーをかけて、ノルマを達成できなかった者や、最下位の者に対して、いやがらせなどを行うような場合には、よくありません。

パワハラになる場合がありますし、また、職場で精神障害による長期休業者が出る原因にもなります。少子化の影響で子供自体が減っておりますから、塾・予備校間で競争が激しくなってきており、その中で職員を競争させて仕事に集中させ、もって授業の質を上げて生徒を確保し、厳しい競争時代を生き抜いていく、それも労務管理のひとつです。

しかし、だからといって、労働者の心身両面の安全を確保する使用者の義務が軽減されることはありませんから、過度の競争によって、精神障害を引き起こす労働者を出すことは違法です。しかも、そのような労務管理法が、長期的に見て真に生産性の向上に役立つかどうかははっきりしておりません。ですから、労務管理においては、安易に競争をあおる方法で労働の生産性を上げる方法をとるべきではなく、職場間の意思疎通をよくするだとか、教育訓練や福利厚生を充実させるだとか、そういったメンタルストレスとは無縁の方法をとるべきです。

給与計算のアウトソーシング

第三に、給与計算の専門の担当職員を置くことができる大規模の事業所は別として、そうでない小規模の事業所の場合、給与計算のアウトソーシングがおすすめであることです。給与計算のような副次的な仕事は、思い切って外部に委託して、本業である生徒により良い授業をおこなうことに集中することも一つの考えです。

塾や予備校の場合は、他の業種に比べて労務に関するトラブルが少なく、また、様々な職種・職業的身分の職員が混在しているというわけではないので、それほど難しいというわけではなく、どうしてもアウトソーシングが必要だというわけではありません。

しかし、オーナーがこのような仕事に時間をとられて本業に集中できないとなると、経営全体が足を引っ張られます。いまでは、給与計算だけでなく、賃金設計や、労務管理全般の相談や手続きも一緒に受け付けるアウトソーシングの会社もたくさんあります。そういった会社の中から、信頼できる会社を選んで上手く利用していくと、良い効果を生み出す事ができます。

いまは、インターネットの普及に伴い、そういうアウトソーシングの会社に対する委託できる範囲が広がり、より便利に、より早くできるようになってきております。これは小規模な事業所に対してはほとんどどの業種についてもいえる事ですが、給与計算のアウトソーシングを検討してみるのもよいことであるといえます。

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