怪我や病気で従業員が長期休暇。そんな時の給与計算の方法って?
従業員の怪我や病気は、突然やってきます。そんなときに企業は、速やかに対応しなければならなないことがたくさんありますが、給与計算もその1つです。
今回は、従業員が怪我や病気で長期休暇になってしまった場合の給与の計算方法を解説します。
従業員が怪我や病気になった場合、特別な免除制度はあるのか?
残念なことに、怪我や病気で長期休暇に入ってしまった場合、社会保険や住民税の特別な免除制度はありません。
では、企業が従業員にしてあげられることは、何もないのでしょうか。
実は、1つだけ、企業が従業員にしてあげられることがあります。それは健康保険の傷病手当金の申請をしてあげることです。
健康保険の傷病手当金とは
従業員が怪我や病気で長期休暇になった場合、企業は休職という制度を適用し、従業員が職場復帰できるまで、解雇せずに雇用することができますが、休職期間中の給与を支払うわけにはいきません。
しかし、収入がなければ従業員はどうやって、暮らしていけばいいのでしょう?
そのような場合に従業員の生活を支えるのが、健康保険の傷病手当金です。傷病手当金は、申請すれば最大18カ月間、給付されますので、企業が申請の手続きをしてあげましょう。
従業員が長期休暇中の給与の計算例
では、本題の長期休暇中の給与計算の解説に入りましょう。
給与計算の方法は、特に難しくはありません。
例として、2016年の5月11日から7月10日までの3カ月間を病気で休職した場合の給与計算を解説します。
長期休暇に入った月(5月)の給与の計算例
<条件>
- 基本給 :200,000円
- 通勤手当 :8,800円
- 健康保険料 :16,000円
- 介護保険料 :0円
- 厚生年金保険料:24,000円
- 雇用保険料 :1,500円
- 住民税 :12,000円
◆基本給の計算
社員就業規則に則って、5月の稼働日数分の給与を支払います。
社員就業規則での月の稼働日を22日とした場合の日割りの支給額は、以下の計算式で求めます。
支給額=基本給÷22日×出勤日数
5月の稼働日は5日間ですので、「200,000円÷22日×5日=45,455円」になります。
◆通勤手当の計算
通勤手当は出勤日数(5日)分を支給しますので、以下の式で求めます。
支給額=通勤手当÷22日×出勤日数
5月の稼働日は5日間ですので、「8,800円÷22日×5日=2,000円」になります。
◆健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料
特に免除はありませんので、<条件>の金額がそのまま適用されます。
- 健康保険料 :16,000円
- 介護保険料 :0円
- 厚生年金保険料:24,000円
- 雇用保険料 :1,500円
◆支給額の計算
支給額は以下の式で求めます。
支給額=5日分の基本給+5日分の交通費
-健康保険料-介護保険料-厚生年金保険料-雇用保険料
-所得税-住民税
=45,455円+2,000円
-16,000円-0円-24,000円-1,500円-0円-12,000円
=-6,045円
支給額がマイナスになった場合、マイナスの給与明細を発行し、会社が立て替えて支払った金額を、支払ってもらうよう手続きをしてください。
長期休暇中(6月)の給与の計算例
6月は基本給が0円になりますので、ひたすら天引きをします。
◆支給額の計算
支給額は以下の式で求めます。
支給額=0日分の基本給+0日分の交通費
-健康保険料-介護保険料-厚生年金保険料-雇用保険料
-所得税-住民税
=0-16,000円-0円-24,000円-1,500円-0円-12,000円
=-53,500
長期休暇が終了し職場復帰した月(7月)の計算例
<条件>
- 職場復帰日 :2016年7月11日
◆基本給の計算
社員就業規則に則って、7月の稼働日数分の給与を支払います。
社員就業規則での月の稼働日を22日とした場合の日割りの支給額は、以下の計算式で求めます。
支給額=基本給÷22日×出勤日数
7月の稼働日は14日間ですので、「200,000円÷22日×15日=127,274円」になります。
◆通勤手当の計算
通勤手当は出勤日数(14日)分を支給しますので、以下の式で求めます。
支給額=通勤手当÷22日×出勤日数
7月の稼働日は14日間ですので、「8,800円÷22日×14日=5,600円」になります。
◆健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料
特に免除はありませんので、「長期休暇に入った月(5月)の給与の計算例」の<条件>の金額がそのまま適用されます。
- 健康保険料 :16,000円
- 介護保険料 :0円
- 厚生年金保険料:24,000円
- 雇用保険料 :1,500円
◆支給額の計算
支給額は以下の式で求めます。
支給額=14日分の基本給+14日分の交通費
-健康保険料-介護保険料-厚生年金保険料-雇用保険料
-所得税-住民税
=127,274円+5,600円
-16,000円-0円-24,000円-1,500円-5,902円-12,000円
=73,472円
怪我や病気で長期休暇になったときの給与計算のまとめ
怪我や病気で長期休暇になった場合、企業は給与を支払うことができません。その代り健康保険の傷病手当金の申請をすることにより、従業員は傷病手当金を受給することができます。長期休暇中の従業員の給与計算は、免除されるものがありませんので、基本的にひたすら社会保険と税金を天引きすることになります。マイナスになった金額は、たいへん心苦しいですが、従業員と話し合って徴収する方法を決めてださい。