従業員が産休中の給与計算、保険や税金の計算を解説します
従業員が産休の間は、社会保険料が免除になる制度を知っていますか。その制度を適用すると、産休中の給与計算もシンプルになります。
今回は従業員が産休中の給与計算の方法を解説します。
そもそも産休とは何か?
産休とは、産前休暇と産後休暇を合わせた呼び方で、女性が出産のために取得することができる休暇です。
産前休暇は、通常妊娠の場合は出産予定日の42日前から、多胎妊娠の場合は98日前から、本人の希望があれば認めなければなりません。
産後休暇は、無条件に出産日から56日間の休暇を認めなければなりません。
産休中の給与については、法律上では支払う義務がありませんが、もし社員就業規定で産休中の給与の支給を保証している場合は、支給しなければなりません。
社会保険の産前産後休業保険料免除制度とは?
女性が育児と仕事を両立することを支援する制度として、社会保険の産前産後休業保険料免除制度があり、この制度を適用すると、産休中の女性社員の社会保険料の納付が免除されます。
免除の期間は、産休に入った月から産休が終わった月までです。
社会保険料は、会社と社員本人が折半して負担するものなので、産前産後休業中の会社負担分と本人負担分を支払わなくてすみ、本人だけではなく会社にもメリットがありますので、この制度をどんどん活用しましょう。
社会保険の産前産後休業保険料免除制度は、社会保険料を免除することにより、育児休業中の社員を持つ会社の金銭的な負担を軽減し、女性社員が子育てしながら仕事ができる職場環境を支援することが目的の制度です。
産休中に免除される社会保険
社会保険の産前産後休業保険料免除制度により、免除させる社会保険を表にまとめてみました。
これだけ免除されると、会社的にもずいぶん負担が減りますね。
保険 | 分類 | 備考 |
---|---|---|
健康保険 | 社会保険 | 74歳まで加入可能 75歳からは後期高齢者医療制度に移行 |
介護保険 | 社会保険 | 40歳から強制加入 |
厚生年金保険 | 社会保険 | 70歳まで加入可能 |
雇用保険 | 労働保険 | 65歳になる年から不必要 |
労災保険 | 労働保険 | 保険料は全額会社負担 |
産休中の税金の扱い
給与から天引きしている税金は、住民税と所得税ですが、産休中は所得がなくなりますので、所得税の天引きがなくなります。住民税は特別な免除制度がありませんので、そのまま天引きしてください。
産休中の給与の計算例
では、具体的に産休中の社員の給与の計算例を見てみましょう。
産休に入った月の給与の計算例
<条件>
- 産休開始日 :2016年2月11日
- 基本給 :200,000円
- 通勤手当 :8,800円
- 健康保険料 :16,000円
- 介護保険料 :0円
- 厚生年金保険料:24,000円
- 雇用保険料 :1,500円
- 住民税 :12,000円
◆基本給の計算
社員就業規則に則って、2月の稼働日数分の給与を支払います。
社員就業規則での月の稼働日を22日とした場合の日割りの支給額は、以下の計算式で求めます。
支給額=基本給÷22日×出勤日数
2月の稼働日は9日間ですので、「200,000円÷22日×9日=81,819円」になります。
◆通勤手当の計算
通勤手当は出勤日数(9日)分を支給しますので、以下の式で求めます。
支給額=通勤手当÷22日×出勤日数
2月の稼働日は9日間ですので、「8,800円÷22日×9日=3,600円」になります。
◆健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料
産前産後休業保険労免除制度が適用されるため、全て免除されます。
◆支給額の計算
支給額は以下の式で求めます。
支給額=9日分の基本給+9日分の交通費-所得税-住民税
=81,819円+3,600円-5,586円-12,000円
=67,833円
産休中の給与のについて
産休中は、社会保険が免除されて、所得税も発生しませんので、天引きしなければならないのは、住民税だけになります。基本給が0円ですので、マイナスの給与明細を発行し、会社が立て替えて支払った住民税を、会社に支払ってもらうよう手続きをしてください。
産休が終了し職場復帰した月の給与の計算例
<条件>
- 職場復帰日 :2016年4月25日
◆基本給の計算
社員就業規則に則って、4月の稼働日数分の給与を支払います。
社員就業規則での月の稼働日を22日とした場合の日割りの支給額は、以下の計算式で求めます。
支給額=基本給÷22日×出勤日数
4月の稼働日は4日間ですので、「200,000円÷22日×4日=14,876円」になります。
◆通勤手当の計算
通勤手当は出勤日数(4日)分を支給しますので、以下の式で求めます。
支給額=通勤手当÷22日×出勤日数
2月の稼働日は4日間ですので、「8,800円÷22日×4日=1,600円」になります。
◆健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料
産前産後休業保険労免除制度が適用されるため、全て免除されます。
◆支給額の計算
支給額は以下の式で求めます。
支給額=4日分の基本給+4日分の交通費-所得税-住民税
=14,876円+1,600円-230円-12,000円
=4,246円
従業員が産休中の給与計算のまとめ
産休中は、社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険)料が免除されますので、基本的に住民税と所得税だけを天引きした給与明細になります。マイナスになった金額をどうやって会社に支払ってもらうかは、会社とご本人で話し合ってください。