美容室オーナー必見!美容師の給料の仕組みと歩合給の計算方法を徹底解説
美容師の給料は、固定給の他に技術手当や役職手当、指名による歩合給など多くの要素があります。
勤続年数で昇給するケースは少なく、給与計算方法も複雑になりがち。
そんな美容師の給料の仕組みと正しい給与計算方法について解説していきます。
独立して美容室を開業しようとしている方や人員を増やそうとしているオーナー必見です!
美容師の給料の仕組み
美容師の平均年収
日本には、さまざまな国家資格があり、美容師も国家資格の一つです。
厚生労働省の「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、理容・美容師の平均年収は319.82万円でした。
国家資格が必要な他の職業と比べると低いことが分かります。
職業 | 平均年収 |
医師 | 1278.53万円 |
公認会計士・税理士 | 701.28万円 |
歯科医師 | 800.09万円 |
獣医師 | 650.02万円 |
薬剤師 | 551.11万円 |
診療放射線技師 | 410.93万円 |
臨床検査技師 | 469.2万円 |
看護師 | 467.81万円 |
保育士 | 456.2万円 |
栄養士 | 365.27万円 |
理容・美容師 | 319.82万円 |
給料が低い理由として、アシスタント期間が長くスタイリストになるまで時間がかかることや、サロン経営に必要な固定費が高いこと、価格競争が激化し低価格化が進んでいることなどが挙げられます。
特に美容室の数は年々増加しており、厚生労働省の令和4年度衛生行政報告例の概況によると、令和4年時点で全国に270,000軒近くあります。
多くの競合店に勝つためには、価格やサービスで他社との差別化を図る必要があり、人件費を削減せざるを得ないのが現状です。
勤続年数別の給料
美容師はスキルや立場・役職などによって給与や年収が異なります。
「令和4年度賃金構造基本統計調査」で勤続年数別の給料額を見てみましょう。
勤続年数 | 月給(所定内給与額) |
1~4年 | 210,400円 |
5~9年 | 263,300円 |
10~14年 | 289,400円 |
15年以上 | 314,400円 |
勤続年数の違いで、これだけ収入に差があります。
これは、勤続年数が上がることで、立場や役職が変わっていくことも関係しているでしょう。
役職別の給料
アシスタントやスタイリストなどは、昇格できる勤続年数のおおよその目安があります。
主な仕事内容と昇格できる年数・昇格するための条件・給与額などを、詳しくご紹介します。
①アシスタント(目安:2~3年目)
美容師になりたての頃は、すぐにお客様のカットができるわけではなく、アシスタントとして受付やスタイリストの補助などを行うことがほとんどです。
アシスタント期間の目安はおよそ2~3年ほど。
さまざまな技術を習得し、店舗ごとに設定されている基準をクリアしていかなければなりません。
お客様に指名されることもないため、歩合給は支給されず基本給が主な収入です。
1ヶ月あたりの給与の目安は約21万円です。
②ジュニアスタイリスト(目安:4~5年目)
ジュニアスタイリストはアシスタント業務に加え、簡単なカットなどを担当します。
まだ指名なども少ないため、歩合給はスタイリストほどもらえない状態です。
スタイリストになるための基準は店舗によってさまざまですが、例として以下のような基準が設けられています。
- 指名数や売上額を達成
- 一定の期間を過ぎる
- 試験に合格する
ジュニアスタイリスト期間の目安は4~5年目まで。
1ヶ月あたりの給与の目安は約22~25万円です。
③スタイリスト(目安:5~9年目)
美容師として一人でも一通り施術ができるようになるのがスタイリストです。
目安は5~9年目ですが、入社後2~3年でスタイリストデビューできるような仕組みが整備されている店舗もあります。
1ヶ月あたりの給与の目安は約26~28万円ですが、歩合制を採用しているサロンが多いため、その収入にはかなり差があります。
トップスタイリストのなかには年収1,000万円を超える人もいます。
④チーフ・ディレクター(目安:6~10年目)
チーフやディレクターは店長の補佐的な役割をする立場です。
スタッフのまとめ役となったり指示を出したりと、店内全般を視野に入れて仕事をする必要があります。
サロンにもよりますが勤続6~10年ほどでチーフやディレクターとなる人が増えていきます。
昇格するとサロンによって、ひと月あたり数千円~数万円の役職手当が支給されることもあります。
収入はスタイリストの給与に役職手当が加算された額です。
チーフやディレクターになると指名料も上がり、一般のスタイリストよりも給料がアップしやすいサロンもあります。
⑤店長(目安:10年前後)
勤続10年前後になると、店長に抜擢される人もいます。
業務内容はスタイリストとしての仕事のほか、店舗の運営やスタッフの管理などもこなす必要があり、指名客以外のお客様はほかのスタイリストに任せる店長も多いようです。
チーフ同様役職手当がスタイリストとの収入の差となります。
給料形態の種類
美容師の給料は、もちろん働く美容室によって違い、その形態もさまざまですが、大きく分けると主に3種類あります。
①固定給:主に正社員のアシスタント
月給金額が固定されており、売上への貢献度に関わらず決まった金額が支払われる方法です。アシスタントは固定給のみの場合が多いです。
②歩合給:主にフリーランスのスタイリスト
お客様が支払った料金の一部を美容師自身の売上とし、その売上に対して一定の割合で給与が支払われる方法です。
完全歩合制はサロンから業務委託されて働く場合がほとんどで、売上の30%程度が手取りとなることが多いです。
③固定給+歩合給:主に正社員のスタイリスト
基本給として固定の金額が決まっており、指名や売上によって上乗せされるケースです。
最低限の給料を保障してもらいつつ、頑張ればその分給料が増えます。
正社員で働く美容師の給与の多くは、この固定給+歩合給のパターンです。
歩合給は努力次第で多くの収入を得ることができるため、仕事に対するモチベーションを維持しやすい点は大きなメリットといえるでしょう。
歩合率の決定方法
歩合率は美容室や美容師によって異なりますが、一般的には売上の30%〜50%で設定されています。
決定方法もさまざまですが、美容師の人材レベルや経験値、業績や店舗規模などによって決めることが多いです。
美容師の給与計算方法
今回は美容師に一番多い「固定給+歩合給+手当」の計算方法について解説します。
歩合や手当の種類
主な歩合や手当は下記のような支給がされることが一般的です。
- 固定給
- 歩合給(施術歩合、指名歩合、店販歩合など)
- 各種手当(住宅手当、育児手当、役職手当、皆勤手当など)
歩合には主に以下の3種類があります。
- 施術歩合…お客様一人当たりの施術料金で得られる、割合に応じた報酬
- 指名歩合…お客様一人当たりの指名料金で得られる、割合に応じた報酬
- 店販歩合…月の総売上が達成したことによって得られる報酬
歩合給の計算方法
加算される歩合率はサロンによって大きく異なりますが、大体売り上げの3%~30%です。
実際に例を出して計算してみましょう。
- 固定給…15万円
- 施術歩合…10%
- 指名歩合…50%
- 店販歩合…3%
- 施術料金(合計)...20万円
- 指名料金(合計)...2万円
- 店舗売上(合計)...100万円
の場合、
- 固定給:15万円+
- 施術歩合:2万円(20万円×10%)+
- 指名歩合:1万円(2万円×50%)+
- 店販歩合:3万円(100万円×3%)=21万円
となります。
歩合率によって大きく給与に差が出るため、サロンごとにどういう給与体系を取るかはオーナーにとってとても重要です。
歩合給の割合を多くした方が社員のモチベーションが上がり長期的に働いてくれる可能性が上がるといういう考え方もありますが、
固定給を低くしすぎると最低賃金を下回ってしまう可能性があるため、必ず月給を所要労働時間で割って時給換算し、確認を行いましょう。
まとめ
今回は美容師の給料の仕組みと歩合給の計算方法について解説しましたがいかがでしたでしょうか。
美容師は国家資格の必要な技術職のため、裁量によって給料に差をつけやすく、歩合給の自由度も高いためオーナーにとっては判断に悩むポイントと言えます。
独自の歩合制度を取り入れるなど、数多くある美容室と差別化をはかることも戦略として必要となってきます。
その分給与計算も複雑になりがちのため、システムを導入するなど効率良く管理し、人件費の削減につなげましょう。